第125回 GLP投資法人のブリッジスキームを利用した物件取得について【J-REIT投資の考え方】

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第125回 GLP投資法人のブリッジスキームを利用した物件取得について【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は軟調な動きになっています。東証REIT指数は、8月上旬から中旬にかけて1,700ポイントを回復する動きを示しましたが、9月6日には取引時間中ですが1,650ポイントを割り込む場面もありました。
J-REIT価格は、月間の値動きを見ると中旬に下落する傾向が4月以降強くなっています。J-REITを投資対象とする投資信託(FOFs)の決算日が多い中旬は、FOFsの分配金支払のための換金売りや解約、それらの動きを見越した機関投資家の売却などが影響していると考えられるためです。従って短期的には東証REIT指数が1,650ポイントを割り込んで推移する可能性もありそうです。

さて今回は、GLP投資法人(証券コード3281、以下GLPJ)が8月29日に公表(※1)した物流施設4物件の売買契約(以下、本売買契約)について記載していきます。本売買契約では、スポンサーのグローバル・ロジスティック・プロパティーズ社(以下、GLP社)が運営するファンド保有の4物件を三井住友ファイナンス&リース(以下SMFL社)が9月1日に516億円で取得し、併せてSMFL社がGLPJに対して平成30年3月1日から平成35年2月28日までの間に売却するものとしています。つまり売主であるGLP社と買主であるGLPJの間にSMFL社が入る、いわゆるブリッジスキームを利用した物件取得手法です。この手法を利用することでGLPJはSMFL社の取得価格516億円を上限として、時間経過とともに平成35年2月末に463億円まで逓減する価格で4物件を取得することが可能となります。
GLPJは、GLP社が日本国内でファンド保有する物件に関しては原則として優先交渉権を持っています。本売買契約対象の4物件も優先交渉権対象となっていましたので、従来ならGLPJが直接取得することとなっていたでしょう。しかし、今回の取得でブリッジスキームを利用した背景には、シンガポールに上場しているGLP社が創業者と中国系投資会社に買収され非上場化するという動きがあります。GLP社は現在買収のための手続き中であり、その影響が4物件取得に係わる資金調達に影響することを回避するためにブリッジスキームを利用したとしています(※1)。
またGLP社の資本構成が変更となる前に4物件に関する本売買契約を締結した理由は、物流施設の価格が今後高騰する可能性が高いという認識を持っている(※2)ためとしています。GLP社の資本構成変更は、正式には7月中旬に決定しました。その前の段階で本売買契約対象の4物件は売買金額の調整を進めていたこともあり、取得先送りによる価格上昇リスクを避ける効果を狙ったもの(※2)としています。従ってGLP社の資本構成変更が完了すれば、投資口価格の動向などを考慮しながら早い段階での物件取得を行う方針も示しています。
本売買契約締結のプラス効果として、GLP社の資本構成変更に伴い懸念されていた、GLPJの物件取得パイプライン維持に関して影響は生じないことが明確になったとことが挙げられます。この点に関しては、スポンサーのGLP社のプレスリリース(※3)でも、GLPJがGLP社にとって重要な存在であり日本におけるポートフォリオを拡大していくとしています。
一方でデメリットとして、4物件取得でポートフォリオの利回りが低下する可能性が高い点が挙げられます。GLPJが決算データを公表している直近決算期(2017年2月)のポートフォリオNOI利回りは5.4%程度(※4)です。一方で4物件は取得額が取得時期によって減少するため現時点では明確な数値が判断できませんが、本売買契約の鑑定評価では、キャップレートが全4物件で4.5%を下回っています。例えば最もキャップレートが低いGLP三郷(鑑定評価額177億円)では4.1%となっています。鑑定のキャップレートは、鑑定会社が想定した収支で算出されているなど実際のNOI利回りとは異なる点も多い数値ですが、GLPJのポートフォリオ利回りを低下させることになりそうです。
ただしこのデメリットは、分配金への影響という面では4物件取得に併せ増資を行なったとしても少ないと考えられます。GLPJは2月/8月決算であり、価格は権利落ちの影響を受けて昨日(6日)まで弱含みの展開ですが、1口当たり出資額に対しては1.5倍以上の水準を維持しています。現状の価格水準が続けば、いわゆるプレミアム増資となりますので低い利回りの物件取得を行っても現在の分配金水準の維持は可能だと考えられるのです。
従って、本売買契約は物流施設の価格上昇傾向が今後も続けば、GLPJにとってプラスとなりそうです。この点を検証するために、次回は物流施設の価格傾向(鑑定評価額)について記載する予定です。

※1:平成29年8月29日付け「資産の取得に関する売買契約の締結に関するお知らせ」
http://www.glpjreit.com/site/file/tmp-KjEsZ.pdf
※2:2017年8月29日付プレスリリース「資産の取得に関する売買契約の締結に関するお知らせ」に関する説明会質疑応答に拠る。
http://www.net-presentations.com/3281/20170829/html5player.html
※3:2017年8月29日付GLP社プレスリリース「GLP CONTINUES CAPITAL RECYCLING STRATEGY IN JAPAN」に拠る。
http://media.corporate-ir.net/media_files/IROL/24/240724/29082017-glp-continues-capital-recycling-strategy-in-japan.pdf(英文です)
※4:年額換算賃貸収益(費用から減価償却費を除外)÷取得額で算出

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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