第50回 米国株はここから2年の動きに注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第50回 米国株はここから2年の動きに注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

19・20日開催の米連邦公開市場員会(FOMC)では、連邦準備制度理事会(FRB)は保有資産の圧縮を決定しました。これは市場の予想通りでした。追加利上げは見送られましたが、12月会合での利上げの可能性が高まったことで米長期金利が上昇したことや、アップルが発売したiPhoneの新機種への評価を理由に売りが出たことで、ハイテク株が売られる場面が見られました。市場では、ハイテク銘柄の割高感を指摘する声が根強く、これも上値を抑えているようです。一部にはすでにバブル化しているとの声もあります。ナスダック指数の株価収益率(PER)は27倍程度とみられています。この水準の評価は分かれるところではありますが、少なくともバブル化しているとは言えないでしょう。

では、真のバブル期にはどのような株価推移になるのでしょうか。その参考になるのは、やはり1990年代から2000年にかけてのハイテクバブルでしょう。このバブルのときの株価動向を知っておけば、ある程度の推測ができると考えます。当時のナスダック指数は1991年の初めからピークまでに13.8倍にまで上昇しました。指数がこのような上昇率になることは、当時は想像もできませんでした。その結果、ナスダック指数の株価収益率(PER)は65倍程度にまで急伸しました。もちろん、このような高いPERの水準が維持できるはずもありません。超割高に買われたわけですから、いずれ急落するだろうということは誰しもがわかっていました。しかし、当時はそれがいつどのタイミングで来るかがわからず、市場参加者はそのような懸念を持ちながらも、結局は高値を追い続けて買い上げたわけです。その結果、2000年に5,132ポイントで高値を付けたわけですが、その後は急落相場となり、2002年には1,108ポイントまで下げることになりました。これは極端な例かもしれませんが、真のバブルの状況ではこのようなことが起きるわけです。このように、今の米国株式市場がとてもバブルとは言えない状況であることがわかります。

さて、現在の株価動向を当時と比較すると、非常に興味深い事実に気づきます。それは、2012年ごろから現在までの株価推移が、当時の値動きと非常に似ている点です。特にナスダック指数は1991年以降の推移と非常に似ています。しかし、今回の上昇局面で当時のように株価指数が10倍以上になるかどうかはわかりません。一方、景気動向を見ると、当時は実質GDPの拡大期間が120カ月と長期間にわたりました。今回はすでに96カ月になりますが、当時と同様に120カ月間の景気拡大となれば、2019年半ばまで好景気が続くことになります。この日柄は、ハイテクバブル時の株価推移と現在の株価が同じ推移になった場合に一致します。つまり、今回も景気拡大が2019年半ばまで続く一方、株価もその時期まで上昇基調が続けば、まさに「ハイテクバブルの再現」ということになるわけです。米国株は本格的な上昇期間に入ると、17年間上昇し続けます。当初は8年間、そして調整後に9年間上昇する傾向があります。このサイクルからも、2012年に始まった今回の株価上昇局面が、当初は2019年から20年ごろまで続くと想定されるわけです。株価水準が何倍になるかは想定しづらいのですが、少なくとも日柄的には上記の期間までの上昇が想定されます。そして、その後に調整し、最終的に2028年から29年ごろに最も株価が高くなるイメージです。ここまでの期間で市場動向を見るのはあまりに長期過ぎるかもしれません。しかし、このような長期的なイメージを持ちながら、現在のハイテク株主導の株価推移が実際に2020年ごろまで続くのか、企業業績なども併せてみていきたいところです。

20170929_emori_graph01.png

江守 哲

エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役

大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧