第129回 「最高益更新」銘柄が増加しているJ-REIT市場【J-REIT投資の考え方】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第129回 「最高益更新」銘柄が増加しているJ-REIT市場【J-REIT投資の考え方】

株式市場は96年のバブル崩壊後の高値を更新するなど好調な値動きとなっていますが、J-REIT価格は下落基調が続いています。東証REIT指数は11月6日に1,620.22ポイントまで下落し、7月14日につけた1,620.38ポイントを僅かですが下回り年初来安値を更新しています。投資家の関心が株式市場に集中しているような状況となっていますので、J-REIT価格は、当面弱含む展開が続くことになりそうです。

さて今回は、1口当たり分配金(以下、単に「分配金」)から見たJ-REITの運用状況について記載していきます。J-REITの場合、一般企業とは異なり増資や借入金で物件取得を行えばポートフォリオが拡大するため、利益を増加させることが難しくない業界です。そのためタイトルの最高益更新に括弧を付けています。実際にJ-REITの業績動向を見る上では、分配金に注目することが重要です。
J-REITの分配金は、図表1の通り過去最高を更新する銘柄数及びその比率が上昇しています。上場後の期間が短い銘柄を除くと(※)全銘柄の実績開示が揃っている2017年上半期は4割を超える銘柄が過去最高の分配金となっています。この点から、タイトルに「最高益更新銘柄が増加」していると記載しています。
J-REIT市場は価格面から見れば低調ですが、分配金という面で見ればこれまでを超える好調な状況となっているのです。分配金は、賃貸市場が堅調であること及び借入金の借換えによる支払利息の減少を主な要因として増加しています。
賃貸市場に関しては、例えば東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィスビルの空室率が3%程度まで低下し、賃料単価は2009年12月の水準まで回復しています。つまりオフィスビルを保有する銘柄は、2009年12月以降に入居したテナントであれば賃料引き上げの交渉ができる状態となっています。
また借入金の借換えの効果ですが、日銀が低金利政策を続けていますので引き続き分配金の増加に寄与しています。例えば阪急リート投資法人(証券コード8977)は、9月に30億円の借換えを行ないました。調達期間は借換え前の5年から10年に長期化しただけでなく、2012年9月に借入れを行った際の調達金利1.33%が借換えにより0.78%に低下しています。この借換えだけで阪急リート投資法人の分配金は年間28円増加する効果が生じています。
本連載でも記載してきた通りJ-REITも投資対象となっている毎月分配型投資信託の資金流出が止らず、これまでJ-REIT価格の安定に貢献してきた投資信託の売り越し基調が続いています。従って価格面では、反転するまでに時間がかかりそうです。
しかし、企業業績の改善により株式市場が好調である点を踏まえれば、その恩恵はJ-REIT収益の基盤である2018年以降の賃貸市場にもプラスに働くものと考えられます。株式市場の最高値更新の動きが落ち着けば、出遅れ感の強いJ-REIT市場に対し投資家の関心が高まる可能性もありそうです。

なお、前々回及び前回記載したインフラファンドに関しては、上場3銘柄が参加するセミナーが11月14日に「インフラファンド投資入門②~上場銘柄の運用方針を知ろう~」として東証主催で開催される予定です。
http://www.jpx.co.jp/learning/seminar-events/seminar/detail/d1/20171114.html

筆者は司会及びパネルディスカッションのコーディネーターとして参加する予定です。有料のセミナーとなっていますが、時間のある方はご参加いただければ幸いです。

※上場期は上場費用などが発生することや運用期間が短い場合が多いなどにより上場2期目には増配となることが多いなど特殊要因があるため、運用実績が短い銘柄を除外している。

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コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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