第53回 やはり異質なトランプ政権【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第53回 やはり異質なトランプ政権【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国の企業業績の発表はおおむね終了しました。トムソン・ロイターの調査によると、S&P500採用企業の17年第3四半期(7月~9月)決算は、前年同期比8.1%の増益となる見通しです。10日までに500社中457社が第3四半期決算を発表しましたが、このうち利益が市場予想を上回った企業の割合は72.0%でした。長期平均が64%ですから、これを上回ったことになります。一方、過去4四半期の平均とは同水準でした。また、S&P500採用企業の今後4四半期(17年第4四半期~18年第3四半期)の予想株価収益率(PER)は18.2倍となっています。過去平均から見ると、株価は割高との評価もあるようですが、まだまだバブルには程遠いといえます。2000年のハイテクバブル時には27倍まで株価が買われましたので、今の水準で上昇が終わると考えるのは早計でしょう。

米国経済の拡大はすでに100カ月を超えています。これは、ハイテクバブル時の123カ月に次ぐ長期間の拡大期となっています。それだけ景気・経済が堅調に推移しているということです。その中で、現在の主要ハイテク企業の収益は着実・確実に拡大しており、これらの企業が牽引する株高基調も十分に正当化されるでしょう。ハイテクバブルでは、将来への期待や希望で買われた面が強かったといえます。収益が出ていない企業の株価が急伸し、PERが100倍を超えるといったことが普通のように起きていました。しかし、いまはそのようなことはありません。実業があり、収益が上がっている企業の株価が正当な評価を受けています。さらに、これまでの事業をベースにした「業績拡大基調」と、新しい分野での「収益基盤の拡充」がみられています。グーグルやアマゾンのような、ソフトやサービスを提供してきた会社がスピーカーを販売するなど、これまで培ってきたノウハウを生かし、ハードにも進出してきています。この新しい動きは、企業業績の拡大につながることはいうまでもありません。また、収益拡大の背景には、クラウド事業の拡充も挙げられるでしょう。このように、新分野における事業への取り組みが収益に結び付けば、それが株価を押し上げるのは当然といえます。

このような地に足がついた企業の成長と株価の上昇はまだまだ続きそうです。といっても、景気拡大が未来永劫続くこともありません。無論、株価の上昇も同様です。悲観的になる必要はありませんが、いずれ投資家心理が楽観的になりすぎ、バブルが醸成され、そして弾けることになるでしょう。当面は企業業績の発表が終了したこともあり、材料面で株価が上昇しづらい時期に入ります。そのため、市場の関心が米議会で審議中の税制改革の行方に移ることも想定されます。下院では法案が通過しましたが、上院では審議が難航するとみられています。しかし、18年には中間選挙が控えています。結果として年内に着地点を見出す努力が図られるでしょう。一方、これまでのトランプ政権下での株価動向は、共和党政権のパターンではなく、むしろ民主党政権のパターンに沿っています。トランプ政権が終わる2020年までの株価上昇に期待が持てるということになりそうですが、逆に言えば、トランプ政権そのものが異質であるともいえそうです。これまでの教訓は、政権運営の乱れは企業業績、ひいては株価動向にほとんど影響を与えなかったことです。政治の混乱を懸念しすぎると、本質を見失うことになります。今後も企業業績の方向性にしっかりと目を向けていけば、これからの強気相場での対処がしやすくなるものと思われます。事実に目を向ければ、トランプ政権の政策ではなく、企業の成長力に期待する展開が続きそうです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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