第4回 プロが金価格を見る勘所【特集】「豊島逸夫の金道場」

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第4回 プロが金価格を見る勘所【特集】「豊島逸夫の金道場」

金はインカムを生まないのでPERのようなベンチマークが無い。1700ドルといわれても割高なのか割安なのか判断しにくいことが悩ましい。
そこでプロがウオッチしている指標を公開しよう。3つある。

【1】ドバイ現地価格とロンドン価格のスプレッド

ドバイといえばインド中東地域の中心的金市場。現物流通の中継基地でもあるので、ドバイ渡しの現地金価格は新興国の金需給を敏感に映す。例えば、史上最高値圏では高値警戒感からドバイは売り一色になりがち。更に、利益確定の売り戻しも活発になるので需給は極端に緩む。その結果余った金塊が大量にロンドンへ空輸で戻される。こうなると国際標準のロンドン渡し価格に比し、ドバイはディスカウント(割安)になる。それでも価格が史上最高値を更新すれば、これはNY市場の先物投機主導による相場過熱とプロは理解し、早晩、売り手仕舞いの「表層雪崩」必至と読む。
逆に、直近の急落局面では、値ごろ感からドバイは現物買い一色。安値圏ではリサイクルの売りも減少。需給ひっ迫の中で先物主導の下げとなる。結果的にドバイはロンドンに比しプレミアム(割高)になる。これは買いのシグナルである。

【2】NY金先物買い越し残高

CFTC(米国商品先物委員会)は毎週金曜の引け後に、投機家の売買残高を発表する。近年は長期上昇トレンドなので売りより買いが常に勝る買い越し状態だ。そこでプロが注目するのは、買い越し残高の数量。過去最高水準が800トン強であるが、このレベルに近づくと、明らかに買われ過ぎ(overbought)で手仕舞い売りが出やすい。逆に直近のように400トン前後まで落ち込むと売りがほぼ一巡し、新規買いが出やすい。所謂「地合いが軽い」状況となる。事実昨晩は金価格が急騰し1700ドルを回復した。先週金曜発表の買い越し残高は前週比23.4トン減で394.9トンと、400トンの大台を下回っていた。

【3】金ETF残高

世界の金ETF残高も1600トンを突破して、ひとつの市場セクターを形成する規模にまで拡大した。(年間の金生産量は2800トンほどである。)
この残高が上昇傾向になると、金価格上昇の前触れとなる場合が多い。逆に下落傾向に転じると、価格頭打ちの予兆或いは追認となりがちだ。近年は残高が膨張したので、売りも買いも常に活発化して、ストックとしての運用資産残高(AUM)は相殺されることが多いが、それでも傾向としてアップがダウンかの方向性は参考になる。

コラム執筆:

豊島逸夫(としま・いつお)
 
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに 金の第一人者として素人にも分かりやすく 独立系の立場からポジショントーク無しで 金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。

ブログは「豊島逸夫の手帖」

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