マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2012年も金価格は総じて高値圏を維持しそうである。
足元では200日移動平均線を割り込んだことで弱気派が急増。ファンド筋の空売りも目立つ。欧州財政危機が信用収縮を誘発して欧州系銀行が手持ちの金を売りユーロやドル調達に走っている。ヘッジファンドは株の損失を金の益出し売りで埋めることで凌いでいる。結局、欧州財政危機が金には売り要因として働く局面が頻繁に起きているのだ。ユーロが売られ、反対取引として米ドルが買われがちでドル高気味に傾いていることも金には売り材料だ。
総じて、金がリスク・オフの日に「安全資産」として買われるより、「リスク資産」として売られるようになっている。
しかし、長期的に見れば、ドル高といっても、ユーロよりマシという程度の「悪いドル高」。ドル高でもドル不安は消えない。結局、基軸通貨ドルも、その対抗馬としてのユーロも市場の信認が薄れ、通貨の世界では王様のいない大空位時代が続きそうだ。
今後、ECB(欧州中央銀行)もQE1(量的緩和)に乗り出し、米国のFRBもQE3に動くようなことになると、「刷れるドル・ユーロ、刷れない金」の差が強く意識され、金価格は新高値を更新するだろう。
一方、新興国も経済減速が顕著で、金融政策を引き締めから緩和へ転換中だ。中国経済のハード・ランディングというリスクは残るが、2012年もインド、中国の二か国で年間金生産量の6割を買い占める状況は続くだろう。
サプライズ・ファクターとしてはイラン。
ホルムズ海峡封鎖などの地政学的要因が原油急騰を招き、金も連れ高になる可能性がある。
但し、そのような「有事の金」買いは短命に終わりがち。一過性の要因である。今後、金が本格的な下げに転じるとすれば、2013年か。
FRBが2013年半ばまでゼロ金利継続を明言しているからだ。米国経済に本格的改善の兆しが明らかになれば、出口戦略も現実的シナリオとなる。FFレートの利上げが現実的にFOMCでも論じられるようになれば、金利を生まない金は売られることになろう。
2012年の年間レンジとしては、リスク回避の売りがピークで1350ドル。欧米QE競演のシナリオで1950ドルと予想する。
2011年同様、ボラティリティーの高い地合いは続くだろう。ドッド・フランク法により大手金融機関がリスクを取れなくなっているので、市場の潤滑油が欠如し、流動性の薄い市場で、値だけ飛ばすことになりがちなのだ。
コラム執筆:
豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに 金の第一人者として素人にも分かりやすく 独立系の立場からポジショントーク無しで 金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
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