マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
このコーナーでは、資産倍増PROJECT ネット証券専用ファンドシリーズの運用会社の方にQ&A形式にて運用されている投資信託について解説いただきます。
第1回目は、「新興国中小型株ファンド」の運用をされているDIAMアセットマネジメント株式会社の方に伺いました。
【Q】資産倍増PROJECT ネット証券専用ファンドシリーズにこの「新興国中小型ファンド」を提案した理由をおきかせください。
【A】まずは、ネット証券の投資家に新たな投資対象・戦略を提供するためです。幅広く世界の「新興国の中小型株」を主たる投資対象とする点で、当ファンドは国内公募ファンド初であり、ネット証券の投資家に新たな投資対象を提供することにかなうファンドと考えました。
また、当ファンドは年金運用など投資のプロフェッショナルの世界では、近年、非常に注目を集めている「低ボラティリティ運用戦略(※)」を採用したファンドです。この戦略も、国内公募ファンドにおいて本邦初の試みで、ネット証券の投資家に新たな投資戦略を提供するという点において意義深いものと考えました。
【Q】なぜ、先進国ではなく、新興国を投資対象とするファンドを作ろうと考えたのでしょうか?
【A】繰り返しになりますが、「新興国の中小型株」という新たな投資機会の提供という観点も理由のひとつです。さらに、中長期の株式投資において、より高い経済成長が期待できる新興国への投資の方が、先進国への投資よりも好パフォーマンスが期待できると考えたからです。
【Q】新興国は成長の伸びも期待できる半面リスクも大きいのではないでしょうか。
【A】確かに、新興国への投資は先進国と比べカントリーリスク、流動性リスク等の投資リスクが高く、また、新興国株は先進国株よりも一般的にはボラティリティが高くなる傾向があり、株式の価格変動リスクも高いと一般的に考えられます。さらに、当ファンドは中小型株を主たる投資対象とするため、大型株よりさらにリスクが高くなることが想定されます。
しかし、そうした情勢も近年、変化してきているのではないでしょうか。新興国の多くは、1990年代後半以降、過去の経験から学び、財政規律の遵守や市場流動性の整備に努め、格付けの向上等も含め、信頼感・存在感を国際社会で大きく高めてきました。特に財政収支での比較では、日米欧主要先進諸国と比較しても、寧ろより健全である新興国が増えてきているのが現状です。
また、当ファンドは低ボラティリティ運用戦略に基づいた銘柄選定を行い、なるべくボラティリティが小さくなるようなポートフォリオ構築を目指します。無論、低ボラティリティ運用戦略を活用したからといって、リスクが低いわけではなく、相応のリスクがあるわけですが、一般論として、投資家の皆様に「長期投資」や「積立投資」という投資スタイルを活用していただければ、時間を味方につけることで一定のリスク低減効果も期待できるのではないでしょうか。
【Q】他にも新興国への投資をしているファンドはいくつかありますが、このファンドの特徴をおきかせください。
【A】一番大きい点は、主たる投資対象が「新興国の中小型株」であるという点です。さらには、「低ボラティリティ運用戦略」の採用と「マルチファクターモデル」の活用という2段構えのクオンツ運用により、世界に広がる裾野の広い「新興国の中小型株」から銘柄を抽出し効率的なポートフォリオを構築しようとする点です。
新興国株式の代表的指数に採用されている銘柄数で見ると、大型株が500銘柄程度であるのに対し、中小型株は2,000銘柄を超えます。特に、小型株だけで2,000銘柄近くになります。このように、大型株と比べ中小型株(特に小型株)は銘柄数が多く、また情報も限られていますので、なかなか、企業訪問などの調査を通じて定量・定性分析を全銘柄に対して行うことは難しいと思います。その点、クオンツ運用により、主には定量データに基づき銘柄を計量的に抽出することで幅広い銘柄に分散投資することが可能と考えられます。
【Q】中小型株を投資対象とする理由をおきかせください。
【A】まず、高い成長期待をあげたいと思います。
中小型株は企業規模が小さい分、業界内でのシェア拡大等からくる、増収・増益のペースは大型株よりも当然高いものになります。ただ、それを、成長スピードの著しい20カ国を超える新興国の、しかも様々な業種(=広い選択肢)の中から、データ分析により抽出するところが、当ファンドの非常に大きなポイントです。
また、現在の新興国の中小型株は大型株と比べ内需関連セクターの比率が高いという特徴があります。今後共、新興国は消費拡大やインフラ整備の進展など内需主導の経済成長が見込まれています。このような、内需関連銘柄が多い中小型株に投資をすることで、今後の新興国の経済成長の恩恵をダイレクトに享受できるのではないかと考えています。
更に付け加えれば、新興国の中でも、特にBRICs諸国の大型株の一部は、先進国銘柄同等の注目を集め、割安度合いは早くも薄れてきています。中小型株にこそ投資妙味の大きい銘柄群が存在していると考えます。
【Q】「新興国の中小型株」というと具体的にどのような銘柄が含まれているのでしょうか?
【A】例えば、2011年12月末時点で組入比率トップの「CP ALL」は、タイのコンビニエンス・ストア運営会社です。セブン・イレブンのフランチャイズ経営で急成長し、国内に6,000余の店舗を展開、さらに、中国の上海や重慶で百貨店チェーンも展開している会社です。株価はこの5年間で約9倍となる上昇を見せましたが、業容の拡大を反映し、足許も依然高値を更新しています。
次に同時点の組入比率第2位の「EDP-エネルジアス・ド・ブラジル」は、ブラジルの水力発電・配電を行う電力会社で、事業の成長スピードは低位ながら非常に安定しています。株価の値動きも落ち着いていて、配当利回りも高く割安な水準に位置しています。
耳に馴染みの薄い銘柄ではありますが、当ファンドの「低ボラティリティ運用戦略」および「マルチファクターモデル」という運用エンジンが安定性と成長性のバランスの取れた形で、各国市場の妙味のある銘柄を選択してくることになります。
【Q】日本の中小型株市場とは違いがありますか?
【A】業種の分布が多少異なります。経済が成長ステージにあることから、電力、通信、資本財等のインフラ関連セクターのウェイトが大きくなります。また、南米・ロシア・南ア等が含まれることから素材セクターのウェイトが高くなります。さらに、産業の中での銀行の占める重要度が大きく、金融セクターのウェイトも高くなります。
国ごとの制度面での制約(海外資本の流入規制等)は多少規制が残っている国も一部ありますが、少なくとも新興国全体への投資としては、それが大きな支障になっている訳ではないと言えます。
流動性を比較した場合、日々の売買代金総額の観点から申し上げれば、大きな違いはないと考えています。当ファンドでの投資対象としている2,000銘柄を超える銘柄群の市場の売買の厚みは、日本の一般的な中小型株のそれよりも、寧ろ充実しています。
企業のガバナンスには一定の留意が必要と言えるかもしれません。中国等、企業統治のモニターが問題となっている市場も一部存在します。しかし、取引所の上場基準やディスクロージャー基準は、より厳格なものに改善されてきており、少なくとも当ファンドでのポートフォリオ構築では、そうしたリスクも最小化するよう分散投資を行っていますので、それが大きな支障になるといった懸念は少ないと考えています。
【Q】今後、組み入れ銘柄、銘柄数、組入比率については、どのぐらいの頻度で変更などが検討されていくものでしょうか。
【A】原則、月次でリバランスを行っており、今後も一定の期間を設けて、定期的に新しい分析結果をファンドに反映させる入替取引を行っていきます。銘柄数につきましては、現状190銘柄程度となっていますが、より効果的に分散投資効果を確保すべく、現状から若干増加させる予定です。
2011年7月の設定以来、株式市場は底値圏から小反発の兆しを見せる局面が数回ありましたが、現状横這いを続けています。しかし、ブラジル・中国といった主要国を中心に、最大の懸念材料であったインフレが後退する傾向を見せており、欧州債務問題の進展次第では、新興国株式市場は、昨年の大幅下落の後を受けて、今年は本格的に底入れの時期を図る展開になるものと見ています。当ファンドの運用戦略上は、そうした局面では、「マルチファクターモデル」の方をより積極的に活用し、ファンダメンタルズの良好な銘柄への投資を行うことで、市場の反発を効果的に捉える方策で対応する所存です。
【Q】新興国の中でも2011年11月30日の月次運用レポートによると
ブラジル・南アフリカ・台湾・トルコ・中国が上位にきているようですが、対象とする国は、どのように選んでいるのでしょうか?
【A】当ファンドでの、国ごとの組入比率は、クオンツ運用による個別銘柄の選択結果を、そのまま積み上げたものとなっており、特に、ブラジル・南アフリカ等の市場全体としての魅力度を判定して、厚めに組入れを行っているものではありません。
例えば、ブラジルでは、ボラティリティの低い電力銘柄で魅力度の高い銘柄が多く選定されており、南アフリカでは成長性の高い内需関連銘柄が多く選定されている、といった状況です。
モデル判断通りでは無い例外として、一部の国、例えば、政情不安のエジプトや、規制により投資が困難なコロンビア等の銘柄は、組入れを見送っております。
【Q】対象とするセクターはどのように決めているのですか?
【A】これも対象国と同様に、クオンツ運用による個別銘柄の選択結果を、そのまま積み上げたものとなっており、特に、電力、素材、食品・飲料、銀行といったセクターの配分比率が、結果的に高くなっています。
【Q】 このファンドの特徴である「低ボラティリティ運用戦略」や「マルチファクターモデル」の効果は発揮されているのでしょうか?
【A】設定日(2011年7月22日)から直近2011年12月末の期間で、当ファンドが投資対象ユニバースとしているMSCIエマージング・マーケット・中小型株の配当込み・円換算ベースのパフォーマンスより、当ファンドの基準価額ベースのパフォーマンスは5%程度上回っており、対インデックスという観点で効果は発揮されています。
この間、欧州債務危機が発生し、市場は約▲26%の大幅下落となっており、ファンドのパフォーマンス(約▲21%)もその影響から逃れることは出来ませんでしたが、ボラティリティを低く抑えることで、市場の大幅調整の中、比較的値動きの少ない銘柄に寄せて保有していたことが奏功したと考えます。また、昨年10月のように一時的に大きく急反発する局面もありましたが、「マルチファクターモデル」の判定で魅力度の高かった保有銘柄が急騰し、市場の上昇を効果的に捕捉出来たと分析しています。
【Q】 読者のみなさまにメッセージをお願いできますか?
【A】2011年は、多くの新興国における金融引き締めによる景気減速懸念の高まり、欧州債務問題の深刻化によるグローバルな金融資本市場におけるリスクオフの動きの強まり、など新興国株式の取り巻く環境は厳しいものでありました。2012年も欧州債務問題に関しては予断を許さない状況が続くと考えられますが、一方で、2011年後半より一部の新興国が政策金利の引き下げなど金融緩和の姿勢に転じるなど新興国株にとってポジティブな動きも出始めました。今後、短期的には値動きの荒い展開も想定されますが、長期的に見れば、新興国の成長は続くと考えられ、当ファンドが主たる投資対象とする「新興国の中小型株」のパフォーマンスにも期待が持てます。引き続き、「低ボラティティ運用戦略」に基づき、効率的なポートフォリオの構築および「マルチファクターモデル」の活用による超過収益の獲得に向け、運用してまいりますので、今後ともご愛顧いただけると幸甚です。
(※)低ボラティリティ運用戦略とは、株価の変動率(ボラティリティ)の小さい銘柄を中心にポートフォリオを構築して、ポートフォリオ全体のリスクをできるだけ小さくすることで投資効率を高める手法を指します。「従来の投資理論は、リスクを取れば取るほどリターンも高くなるというのが"常識"でした。そして、リスクとリターンの最も効率的な組み合わせが、時価総額のウエイトで保有する"時価加重インデックス"と言われてきたのですが、最近の研究では、時価加重が必ずしも効率的ではないことがわかってきました。実は、ボラティリティを極力小さくした低リスクのポートフォリオのほうが、結果的にリスク調整後のリターン、つまり投資効率が高くなるという現象が世界的に観測されています。
(※)当コラムは2012年1月12日に執筆いたしました。
お取引の際には、以下をご確認ください。
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「ネット証券専用ファンドシリーズ 新興国中小型株ファンド」の重要事項
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■ リスク
・ 当ファンドは、株式などの値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替リスクもあります。)に投資をしますので、市場環境、組入有価証券の発行者にかかる信用状況等の変化により基準価額は変動します。したがって投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じることがあります。・ 当ファンドの基準価額の変動要因となる主なリスクとしては、「株価変動リスク」「為替リスク」「信用リスク」「個別銘柄選択リスク」「流動性リスク」「カントリーリスク」などがあります。
■ 手数料等
当ファンドの取引にあたっては、以下の手数料等をご負担いただきます。申込手数料 : かかりません解約手数料 : かかりません信託財産留保額 : 換金申込日の翌営業日の基準価額に0.3%を乗じて得た額信託報酬(年率・税込) : 純資産総額に対して1.995%を乗じた額
・ 上記以外にも保有期間中に間接的にご負担いただく費用(その他費用)があります。その他費用については、運用状況等により変動するものであり、事前に利率、上限額等を示すことができません。※ 当ファンドに係る手数料(費用)の合計額については、申込金額、保有期間等の各条件により異なりますので、事前に利率、上限額等を表示することができません。
■ その他
・ お申込み/ご購入にあたっては「目論見書」「目論見書補完書面」をご覧いただき、取引の仕組みやリスク・手数料等についてご確認ください。
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