第5回 今の金価格を読む勘所 【豊島逸夫の金道場】

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第5回 今の金価格を読む勘所 【豊島逸夫の金道場】

2011年、金は1,900ドル台の史上最高値をつけたがその後2回に亘り1,500ドル台まで急落。ところが今年に入るや再び1,800ドルまで再接近した後1,700ドル前後まで売り込まれた。
金は上げなのか下げなのか、見極めの正念場である。

結論から言うと、短期的にはギリシャ・リスク後退の中でリスク・オンの買いにより反騰中だが、地合いは脆弱。

然し、年後半まで展望すれば、新高値更新も充分に考えられる。

勘所は三つ。

【1】日米欧の金融緩和で大勢は買いモード

足元では、FRBのQE3依存症の如き相場展開だ。米国マクロ経済データ好転が持続すれば、QE3遠のく(あっても年後半にずれこむ)との解釈で金は売られる。ところが、先週金曜日(2012年3月9日)の米雇用統計で良い数字が出ても、直前にWSJ紙がスクープした「FRB、不胎化つきQE検討中」との報道が効いて、金は買われた。

更に、ECBのLTROも「欧州版QE」として金には買い材料となっている。2012年後半、緊縮政策により欧州の景気が悪化した場合に、ドラギECB新総裁が「国債買い取り」という形の本格的量的緩和に大きく踏み込むと、欧米QE競演のシナリオも視野に入る。これが2000ドル接近のケースである。

なお、我が日銀の追加的金融緩和が円安を招来し、円建て金価格が各国通貨建て金価格レースの中ではトップになっていることも特筆に値する。これまではドル建て金価格が上がっても、円高で相殺されるという状況であったが、今は全く逆の展開。欧米市場でも円建て金価格が注目されている。

【2】欧州債務危機再燃で短期的な売り局面が頻発

ギリシャ問題で「安全資産」として金は買われずに、「リスク資産」としてリスク回避で売られる状況が続いている。

足元ではデフォルト認定なれど織り込み済み。基本的にはギリシャ救済進展を評価したリスク・オンで金価格は上昇中だ。しかし、債務削減交渉がポルトガルに及ぶ可能性、4月にはギリシャ総選挙、そしてフランス大統領選挙と欧州債務危機再燃を連想させる材料がメジロ押しだ。筆者が過日ギリシャを訪問したときの感触も、「緊縮政策受け入れはレーム・ダックの現首相が署名したこと」と素っ気なかった。
長期的上昇トレンドなれど、ところどころに欧州発の売りの落とし穴が待ち受けている。

【3】中国経済ソフト・ランディングなら安堵感

第11回全国人民代表大会で経済成長率が7.5%に引き下げられ、消費者物価上昇利率も昨年の6%台から3.2%にまで下がってきた。中国経済のバブル崩壊シナリオは金需要減少となり売り材料であるが、総体的に緩やかな経済減速と物価下落という軟着陸に落ち着けば、金市場には安堵感が流れる。中国人民銀行が更なる金融緩和に踏み切れば、これは直接的上げ材料となろう。

コラム執筆:

豊島逸夫(としま・いつお)

豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに 金の第一人者として素人にも分かりやすく 独立系の立場からポジショントーク無しで 金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。

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