第7回 まずは香港上場企業を知ろう!第一回:公益事業会社編 【香港より生レポート~中国の今を知る】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第7回 まずは香港上場企業を知ろう!第一回:公益事業会社編 【香港より生レポート~中国の今を知る】

こんにちは。香港・マネックスBOOM証券の山田と申します。昨年10月よりマネックス証券のグループの香港の証券会社に勤務しています。1月から3月の間、コラムを書かせていただいていましたが、引き続き連載をさせていただくことになりました。香港や中国の近況を紹介できればと思っていますので、今後とも宜しくお願いいたします。

今回は、香港・中国の公益事業会社、日本の上場企業で例えると、各電力会社や東京ガスなどのガス会社、JR東日本などの鉄道会社をご案内いたします。最初は私の個人的な好物の不動産会社をご紹介しようかとも思っていたのですが、後述する事件などもあり、その気が萎えてしまいました。

さて、香港の近況から。2012年3月25日に香港では行政長官選挙が行われました。有力とされていた2候補はいずれも親中派と呼ばれており、結果的にその内の1人である梁振英氏が勝利を収めました。敗れた唐英年はもともと政務官という行政長官に次ぐ役職にあり、有力とされていたのですが、選挙期間中に不祥事などが発覚し、結局、梁氏の勝利を許すことになりました。

その梁氏の勝利は中国政府側の意思が働いているとされています。そもそも、香港での行政長官選挙は一般市民が投票できるような普通選挙ではなく、選挙委員と呼ばれる1,200名が投票権を持っている間接選挙制を採っています。それゆえ、各種業界団体や中国政府などの影響力が強いと批判の対象になっています。

勝利した梁氏は中国共産党員ではないかと囁かれるほど中国寄りとされるだけに、今回の選挙結果を受けて、中国の干渉や選挙制度に対する批判が高まっており、先週の日曜日(1日)には15,000人を動員したという反中国のデモが行われました。月曜日の地元紙の多くはそのデモを一面に掲載しています。

先立つ3月29日には香港不動産大手で時価総額最上位のサンフンカイ不動産(00016)の共同会長が汚職で逮捕されるという事件もありました。サンフンカイの時価総額は3兆円近い水準で三菱地所や三井不動産を上回る企業です。香港の景色の香港島側のランドマークであるIFC(415m)と九龍半島側のランドマークであるICC(484m)を開発した会社です。同社株は30日の取引で13%の急落となりました。

先ほどの選挙で敗北した唐氏は香港の不動産業界が後ろ盾だったと言われており、逮捕が選挙直後だったということもあって、どことなくきな臭い展開です。そうした中、15,000人規模のデモが起きたわけです。自分が話した限りでは、香港の人はリベラルな人が多く、自由・民主・自治に対する思いが強いように思います。街でも「反共」と書かれたプラカードを見かけることが少なくありません。香港ではFacebookやgoogleを多くの人が使っています。返還からすでに15年が経ち、50年間とされている「一国二制度」の終わりが徐々に近づいていることや、中国の台頭などは、たとえば相続や子供たちのことなどを考えたときに大きな不安材料になっているように思います。

さて、直近の話題が長くなりましたが、そもそも香港が中国に返還された際の理由として、電力や水を中国本土側に頼っているのが大きかったとされています。中国は英国の統治下においても、香港に電力や水を供給しており、それは今も継続しています。(香港内で供給されているものもあります。)香港と深センは東京都心から大宮くらいの距離ですが、その深センには複数の原発が稼動しており、香港の夜景を支えているわけです。

その甲斐もあってか、香港における公共料金というのは信じられないくらい安いです。私は東京と似たような暮らしをしていますが、電気代は月2,000円しません。(その上、政府の補助が同じくらいあります)ガス代も月2,000円程度で、水道に至っては3ヶ月分で300円ほどでした。電気代はこれからの季節上がっていくように思いますが。日本では合わせて月に10,000円以上だったので、香港での公共料金は、お財布にやさしいです。ちなみに、公共交通機関が安いことでも有名で、地下鉄の初乗りは40円ほど、バスも40円ほど、タクシーが200円程度です。

このような生活は中国からの電力や水、さらにおそらくは労働力によって可能となっているのでしょう。もちろん、過去のコラムで取り上げたような経済面での結びつきも大きいのですが、生活においても中国と密着しており、今後の中国との関係においても無視できないと考えられます。

逆の見方をすると、当たり前のことですが電力やガス、水道といった公益事業は手堅いということだと思います。これは例外的事象を除けば日本と同様です。主な電力会社では、CLPホールディングス(00002)と電能実業(00006)が有力で、前者は香港の九龍半島側、後者は香港島側をカバーしており、いずれもハンセン指数採用銘柄です。両社とも香港のみでは成長余地が小さいということで、海外展開を活発に行なっています。公益事業だけにリーマンショック後でさえ、業績は安定しており、いずれも配当利回りが4%近く、長めの投資に向いているようです。

大陸で展開している華電国際電力(01071)や華潤電力(00836)も上場していますが、CLPホールディングスや電能実業のほうが安定しているように思います。
ガスだと、香港中華煤気(00003)が香港をほぼ抑えており、中国へも様々なプロジェクトで積極的な展開を図っています。成長性という点では同社の子会社である港華燃気(01083)が中国本土で業績を伸ばしており、期待できるかも知れません。

また、香港では水道事業を水道局にあたるところが行なっていますが、中国大陸では中国水務集団(00855)などが水道事業を展開しています。これから中国の水事情がテーマになってくるという見方もあるので、おもしろいかも知れません。直接の水道ではないですが、水道用の給排水パイプメーカー天業節水(00840)も注目されます。

また、過去の連載でも繰り返し書いてきた香港で独占的に鉄道事業を行なうMTR(00066)も株価推移も安定しており、事業も安定、配当利回りも3%近いのでおもしろいように思います。

本連載は隔週での連載で次回は4月18日掲載の予定です。今後もこちらのニュースや実感をもとに、香港・中国の企業や株式市場の仕組みなどを案内させていただければと思います。

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山田真一郎  マネックスBOOM証券 マーケティング部

マネックス証券入社後、日本株の業務・商品・トレーディングツールの企画・マーケティングなどを担当。2011年10月よりマネックスBOOM証券に勤務。日本証券アナリスト協会検定会員。

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