第9回 GW挟んで波乱のマーケット、波乱のキッカケとニュースの読み方 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第9回 GW挟んで波乱のマーケット、波乱のキッカケとニュースの読み方 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

GW明けの5月7日の日経平均株価は前営業日比261円もの大幅安、為替市場でもドル/円相場は80円割れに沈んでのスタートとなりました。GWに入る前と比較するとマーケットのセンチメント(ムード)が大きく変わってしまっています。

ウォール街には「Sell in May and go away」という格言があり5月は株価が下落するリスクがいろいろとあると4月のコラムに書きましたが、今年の5月のマーケットも波乱の幕開けとなりました。さて一体何が原因だったのでしょうか。

NHKを始めTVの一般ニュースはフランスの大統領選挙の結果を伝え、現職のサルコジ氏が敗れ社会党のオランド前第1書記が次期大統領となることで欧州の債務危機対策(緊縮財政路線)が軌道修正を迫られることを懸念してユーロが売られて株価が下落していると伝えています。また、ギリシャ総選挙で連立与党が過半数割れとなったこともユーロ売りの材料だとし、日本政府が為替市場などでの投機的な動きへの警戒を強めているとも報じています。

こうしたニュース、間違いではないのですが正確ではないと考えられます。というのもサルコジ氏が劣勢であることは事前に解っていたことで、オランド氏が次期大統領となるだろうことをマーケットはある程度織り込んでいました。「何を言うか、実際ユーロは売られたじゃないか」というご指摘もあろうかと思いますが、特にユーロの値下がりが目立ったものの豪ドルもポンドもNZドルも全て売られています。そしてこうした下落は6日日曜日に実施された、フランス大統領選挙の結果を受けて最初にスタートする今日の東京時間から始まったわけではなく、すでに4日金曜の夜にはダウ平均が168ドルもの下落となるなど、GWの最中にすでに動きが出始めていたのです。

実はフランス、ギリシャの選挙結果が出る前の金曜の夜、マーケットの波乱要因となる大きなイベントがありました。それがアメリカの雇用統計の発表です。

雇用統計とはアメリカの景気動向を計る上でマーケット関係者が重要視している指標です。主にNFP(非農業者部門雇用者数)の増減と失業率の数字を見てマーケットは動意づきます。通常地味な値動きのドル円/相場もこの時ばかりは上下に1円以上動くことも。数字が良ければ景気回復の足取りが力強いとしてドルが買われ、株価も買われる傾向があり、悪ければ逆にドル売り、株安となる傾向にあります。

これが、2011年12月から今年の2月までのNFPが20万人増と、とてもいい数字であったことでドル安には歯止めがかかり株高となっていました。しかし、前回3月の数字と先週末4日に発表された4月の数字が20万人増に届かず期待したより悪かったことが嫌気され、株価もドルも大きく売られたのです。
一方で失業率は12月の8.5%から徐々に低下しており、今回の数字も3月の8.2%から8.1%へと改善しており、この数字だけを見るとそれほど悪い内容ではないじゃないか、と誤った理解をしてしまいそうになりますが、失業率が改善したのにはカラクリが。

細かくデーターを見ていくと、非労働力人口が52.2万人も増加しているのです。つまり、労働参加率が低下しているんですね。労働参加率が減少するというのは職探しを諦めてしまった人が増えていると言うことです。これは雇用に対する米国民の悲観が高まっていると考えられています。労働力参加率は63.6%と、前月の63.8%から低下しており、なんと1981年12月以来の低水準。これが失業率1%ポイント改善のワケで、実はネガティブな改善なのです。

欧州のリスクだけでなく、アメリカからも先行きを不安視せざるを得ない指標が出てきたことでGWを挟んでマーケットのムードが大きく変わってしまったというのが正確な解説なのでないかと思います。
さらに、WTI原油価格がGW中に100ドルを大きく割り込む下落となっていることも気がかり。コモディティ市場は流動性が低いため、株式市場に先んじて動く傾向がありますので、今後は原油や金価格などの動向にも注意を払っておきたいですね。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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