第11回 避難通貨として買われていたポンドの今後 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第11回 避難通貨として買われていたポンドの今後 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ギリシャのユーロ圏離脱シナリオが浮上してからマーケットはリスク回避志向が鮮明となってきました。離脱は現実的ではないと思いますが、マーケットは不確実性を嫌うためにリスク資産の圧縮を粛々と進めているという状況。コモディティや株などのリスク資産が売られ、米国債、日本国債などに資金が流入しています。

年初に1000兆円に迫る日本の公的債務を理由に「ギリシャの次は日本だ」と投機筋が日本国債売りを仕掛けてきましたが、私は、投機筋のシナリオに一喜一憂するものではないな、と思いますね。結局「金融危機」が懸念され始めると日本国債や米国債が買われるのです。これは2011年、債務上限問題があったアメリカを「米債の時代は終わりだ」として売り推奨したPIMCOのビル・グロス氏が後に敗北宣言を出して米国債券を買い戻したことを思い返す動きでもあります。

そして為替市場では米ドルや日本円が買われています。米国はQE政策でマネタリーベースが急拡大しドル安が進行していましたが、2011年ぐらいからドルの独歩安進行は止まっています。ユーロの弱さや世界景気の後退懸念から、これまで積極的に投資されてきた豪ドルなども大きく売られ始め、結果的にドルが強くなってきています。また2012年2月14に日銀が追加緩和策とインフレ目標1%目処を発表してからは円が売られ、いよいよ円高の終焉が見えたようにも思えましたが、結局日銀の緩和策発表以降急落した円は全て買い戻され、「行って来い」となってしまっています。

現在のような金融危機時、リスク回避時に資金がどこへ逃げるのかを覚えておくといいでしょう。
まずは有事のドルという言葉があるくらいです、ドルは基軸通貨なので強い。ただし、9.11やサブプライム、リーマンショックの時のように米国が当事者であった場合、またFRBが米国危機を乗り切るためにお金をばらまいている時はその限りではなかったのですが・・・。現在問題となっているのが欧州ですので、やはり積極的にドルを売る局面ではないでしょうね。(今後QE3が実施されたり、財政問題から米国が市場リスクのターゲットとなれば状況は変わることもあります。)

そして避難通貨として資金が集まった為に円高が進んだとも言われている日本円。現在のリスク回避の流れで再び円高が進んでいますが、2月に日銀がデフレ脱却のための緩和策を講じることを表明しており、これまでのように安心して逃避先として資金を置いておくわけには行かなくなっています。野田首相も先週、日本単独での為替介入の可能性を否定しなかったことから介入への思惑も出てきていますので、ここからの円買いは慎重にしたほうがよいと私は思います。

ちなみにこれまで避難通貨として代表的だったのがスイスフランですが、スイス国立銀行2011年9月6日にユーロ/フランの下限を1.20に設定すると発表。ギリシャに端を発する欧州ソブリン危機からユーロ圏のお金持ちが資金をスイスに移す動きが加速してユーロ安スイスフラン高が進行し、スイスの輸出業者は苦境に立たされていました。スイスは国立銀行によるスイスフラン売り介入でスイスフランを上昇させないことを宣言したのです。
これでスイス買いには妙味がなくなりました。避難通貨から外されています。日本円やスイスフランが避難先として安心できなくなったことで注目されたのが英ポンドでした。なんとポンドは今年に入り3.4%高と、主要先進国10通貨で最大の上昇を見せたのです。英国を巡る経済的状況は決して良くないのですが欧州よりは全然マシ。中央銀行が介入し始めたスイスや日本には逆らいたくない。どう考えても消去法で選ばれたとしか思えませんが、ポンドがいつの間にか最強通貨になっていたことにお気づきの方も多かったと思います。

しかしそれもメディアに出てしまえば終わりなんでしょうかねぇ。
2012年5月14日にブルームバーグが「英ポンド、スイスフランに代わり欧州で最も人気の避難通貨に」という記事を掲載した2日後に暴落です。16日、英国の四半期インフレ報告が発表されてからポンドの先行きに楽観視が出来ないことが明らかとなってしまったのです。

英インフレ報告では、成長率見通しは2月時点より引き下げられ極めて不透明であること、深刻化するユーロ圏債務危機が英国の景気回復に対するリスクであることが示されました。向こう2年でインフレは1.6%になるとして中期的インフレリスクは下方修正、キング総裁は追加刺激策の実施は依然として選択肢の一つであることを表明したのです。

つまり英国の追加緩和への思惑が広がってしまったということ。先進国は現在どの国も緩和策をとっていますので何処も同じようなものですが、これまで投機に「避難通貨」として囃されてきたプレミア分ははげ落ちてしまうでしょう。週足などの長いチャートを見ているとポンドは完全にレンジ相場の中で行ったり来たりしているだけですが、それでもレンジ下限である1.5250ドルくらいまでは下値余地があると考えておいたほうがよさそうです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自信のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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