マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2012年5月6日のギリシャの総選挙で連立与党が大敗したことから再燃した今回の金融危機は、これまで堅調に見えた米株までを崩落させ、いよいよ世界同時株安の様相を呈してきています。
6 月17 日のギリシャの再選挙に向けて同国のユーロ圏離脱が現実的なシナリオとして意識され始め、この選挙で新政権がこれまでの債権国との合意を反故にするようなら、今後の金融支援はなくなり、ギリシャのデフォルト、そしてユーロ圏離脱につながるという見方がユーロ売りを加速させており、ユーロ/円は先週末(6月1日)1ユーロ95円台にまで下落しました。リーマン・ショックの直前には、1ユーロ169円まで上昇したユーロですが、この先下落は続くのでしょうか。
欧州の問題は、ギリシャだけに留まらずスペインにまで波及してきました。スペインの失業率は24.3%で、EU域内で最悪。若年層の失業率はなんと51.5%、住宅価格は2008年3月のピークから約2割下落し不動産バブルの崩壊が深刻化しています。先にバブル崩壊に直面したアイルランドの不動産下落率は5割に達していることからスペインも2割で収まると見る向きは少ない状況の中で、スペイン政府は年金を減額し、退職年齢を67歳より上に引き上げる計画を検討しているのだとか。
5月9日、スペイン3位の大手銀行バンキアが膨らむ不良債権に白旗を挙げ、政府が45億ユーロもの公的資金を注入し一部国有化を決めたのですが、バンキアは5月25日にはさらに190億ユーロが必要だと表明、スペインの銀行の金融システム不安が広がったのです。一体いくら必要なのでしょうか?!スペインの銀行は不動産融資関連の不良債権の全貌を覆い隠しているとされ、債務返済能力がなく実質的に破綻している不動産開発業者を融資の借り換えを通じて延命させているとの指摘もあります。
また5月25日、スペイン1裕福な州とされているカタルーニャ州(州都バルセロナ)が資金調達を断念し中央政府に支援要請したことも市場の不安を拡大させました。カタルーニャはスペインGDPのおよそ2割を占める大きな州。銀行不安だけでなく地方財政悪化も大きな問題となったことで市場ではスペイン国債が売られ、10年債利回りは5月30日、6.7%にまで高騰しました。
10年物国債利回りの7%は大きな意味を持っており、この水準を超えると利回りの上昇に弾みがつき、自力で市場から資金調達するのが困難になるとされています。つまりスペインは自国で資金調達ができなくなる一歩手前まで来てしまっているのです。
それならEUやIMFに支援要請をすればいいじゃないかと思われるかもしれませんね。
しかし、スペインのラホイ首相はこれを拒否しています。財政破綻の烙印を押されることとなれば市場からの資金調達ができなくなるだけでなく、これまで以上の厳しい財政緊縮策を課されることとなるためです。スペインはECB(欧州中央銀行)にスペイン国債を買ってもらうことで危機を乗り越えたいと考えているようなのですが、ドイツが猛反対しており、これがこの危機を乗り切る得策とも思えません・・・・。
スペインのGDPは1兆5000億ドル(およそ120兆円)とされ、その規模はオーストラリアに匹敵します。
2013年までにスペインが必要とする資金は6668億ユーロ(およそ65兆円)で、これは3年かけてギリシャを支援する金額のおよそ5倍です。EUは危機を乗り越えるためのセーフティネットとしてEFSF欧州安定化基金を設立していますが、この安全網だけではスペインを救済するには足りないと言われており、いよいよ欧州の問題が「埼玉県程度のGDPのギリシャ」の救済を考えるだけでは終わらないところに来ているのです。
しかし、為替市場というのは一方的にある通貨が下がり続けてゼロになってしまうということはありません。ユーロがゼロになることはないのです。崩壊してドラクマやマルクなど各国通貨に戻ってしまうということがあれば話は別ですが、仮にそうした結論があったとしてもまだまだ先の話だと思います。為替相場というのは2通貨間の綱引き。相対的なものです。大きく下げては戻り、戻っては下げてを繰り返し、最終的に居心地のいい水準に落ち着くもの。ユーロ/円相場は4月20日から1ヶ月以上に渡り下落を続け、先週末の米雇用統計の悪化で大きく売り込まれた水準で長い下ヒゲをつけて反発しています。今週はECB理事会も予定されているため、中央銀行への期待からユーロの反発局面となり、心理的節目である100円前後を目指すものと思っています。しかし戻った後は・・・あまりにスケールの大きな債務問題へと波及していることから再度売られる流れとなるのではないか、と見ています。今、最安値水準にまで下がったところを追いかけて売りこむことのないように。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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