第16回 窓を開けて寄付いた場合のトレード法 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第16回 窓を開けて寄付いた場合のトレード法 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

この6月はユーロ/ドルやユーロ/円が週明け月曜の東京寄付きにギャップアップスタートすることが2度もありました。ギャップアップとは窓開け上昇スタートのことです。反対にギャップダウンは窓を開けて下落してスタートすること。週末を挟んで週初の取引開始時点に価格が飛んでしまうことを「ギャップができる」とか「窓が開く」などと表現します。

値段が飛ぶような事象は流動性が高く24時間取引が行われている為替市場ではあまり起こらない現象です。市場が閉まっている時間に多くの売買注文が出される株式市場では窓開けは珍しいことではありませんが、為替相場は市場が閉まるのが土日のみなので窓を開けるのはほぼ週明けの東京市場の寄付きに限られているといってもいいでしょう。(※リーマン・ショック級の大事件の時は銀行がレートを提示せず値が飛ぶこともありますが、滅多にありません)土日の休日中に起こったイベントや、重要な経済・金融の決定事項が月曜日の朝一番の価格に反映されるために起こる現象なのです。

私達個人投資家がFX取引をスタートできるのは月曜の朝6時から7時くらい(業者によって異なる)ですが、為替市場がスタートするのはニュージーランド、オーストラリアなどのオセアニア市場が最も早く、少し遅れて世界3大市場の1つと言われる東京マーケットがオープンとなります。また厳密にはインターバンク市場と呼ばれる為替の銀行間取引は市場全体を管理する機構がないため、比較的自由で取引時間も特に取り決めがありません。相手さえいればいつもで取引が可能なのです。基本的には土・日は参加者がいないので、休場状態になっているにすぎず、何か大きなイベントがあった時には休日中にでも取引が行われたりします。つまり日本のマーケットがオープンしていない間にも、オセアニア市場で、あるいは銀行間では取引が行われており、この間にレートが動いてチャートにギャップが開いてしまうのです。

このギャップ、週跨ぎで逆のポジションを抱えていたら大変な目に合ってしまうため、トレーダーには大きなリスクとして恐れられており、週末にはポジション調整(ポジションをスクエアにする=手仕舞い)が行われやすいのですが、逆に月曜早朝に早起きして、上手にトレードすれば大きなチャンスにもなります。

6月に2度もギャップアップして月曜にユーロが買われてスタートしたのは、週末にユーロにとってプラスと考えられるニュースが飛び出したからでした。6月10日(日)はEU圏財務相がスペインに最大1000憶ユーロの支援で合意した、というニュースが好感され6月11日(月)東京市場ではユーロドルで100pips以上、ユーロ/円で1円以上高く寄付きました。ところがこの支援スキームがまだ具体的でなかったことなどからユーロはジリジリと売られ、結局はギャップを全て埋めてしまう結果に。

また世界が注目した6月17日(日)ギリシャ再選挙は緊縮財政に前向きな2政党が過半数を確保し、ギリシャのユーロ離脱はひとまず回避できたことから、6月18日(月)東京オープンはユーロドル60pips程度、ユーロ/円でも60pips程度のギャップアップスタート。ところがまたしてもユーロはギャップを埋める結果になっています。
月曜の寄付き、あるいは寄り付きから1~2時間程度の高値が天井で結局ユーロは下がってしまったのです。2週続けて全く同じ展開となり、ギャップは埋めるものなのか?と認識された方も多かったのではないでしょうか。

再選挙で緊縮派が勝利を治めたと言っても、それでギリシャを巡る問題が片付いたわけでも何でもないわけですから継続して買える材料ではなかった、という後付けの理由はいくらでも付けられるのですが、単純な話、テクニカル的にFXトレードの場合、ギャップは埋める動きをしやすいという特徴があるのです。

ギャップが開くというのはそれほどに強い動きだとも言えるため、また、大きなニュースが出ているために、ついギャップが開いた方向に乗ってポジションを取りたくなってしまうものですよね。

しかし、本当に強い場合は寄付いてなお一方向に動き続けるものです。その場合はとてつもないエネルギーが働いていると見てそのトレンドに乗るべきなのですが、ギャップを開けて寄付いた後、そのレベルで揉み合いに入ってしまうようなら、それは本当に強いわけではなく材料不足だということになります。市場の薄いところ(流動性の低い市場)でついた値段は、本格的な強さが見いだせない場合「行き過ぎ」としてギャップが開く前の水準にまで戻される傾向があります。こうした動きを「窓埋め」と呼びます。価格が相対的なものではない株式市場ではこの窓埋めはあまり起きにくく、評価された方向にトレンドを作りやすいのですが、2国間通貨の相対的な価格を取引する為替市場の場合、行き過ぎは修正されやすく窓埋めが起こる確率が比較的高いのです。これが今月ユーロ相場で2週続けて起こりました。

ギャップは埋めるもの、として週明けのギャップを逆バリでトレードする、という手法でコンスタントに勝ち続けている投資家も存在します。早起きは三文の得、というわけです。しかし、ギャップが開くようなイベントは毎週末あるものではなく、投資機会としてはあまり多くはありません。また、確率的には高いとはいえ、何事にも絶対はということはありません。どんなトレードにもロスカット・ルールをお忘れなく。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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