第17回 EU首脳会議通過、どう読む?ここからのマーケット【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第17回 EU首脳会議通過、どう読む?ここからのマーケット【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週世界中が注目したEU首脳会議は、ドイツのメルケル首相の「共同債は私が生きている限りはない」発言などから、過度な期待が薄れていた分「欧州救済基金による銀行への直接資本注入」や「銀行監督制度の一元化」「国債市場の安定化策」などで合意があったことがポジティヴサプライズとしてマーケットのムードを明るくしました。

しかし、ESM欧州安定化メカニズムが銀行に直接資本注入できるのは2012年末になる見通しで、それまでスペインは持ちこたえられるのか疑問ですし、国債買入れにしても要請国に対しては緊縮策など厳格な条件が求められるうえ、救済基金の財源も潤沢ではないことなどが指摘されています。週明け月曜にはフィンラインド政府が「フィンランドとオランダは、ESMによる流通市場での加盟国の国債買取に反対」との声明を出しており、先週大きく上昇したユーロもジリジリと値を崩してしまっています。EU首脳会談での合意内容は評価できるものの、債務危機への抜本的解決の道筋は見えず、時間を稼ぐ程度の効果しかないものと考えたほうがいいでしょう。

ではここからのマーケット。だからといってユーロは今すぐ売りなのでしょうか?!

欧州危機を掘り下げて調べれば調べる程、ギリシャやスペインがデフォルトを回避するのは到底無理であろうと私は考えています。当コラムではその理由は割愛しますが、いずれユーロ離脱、あるいはギリシャ、スペインのさらなる債務カットが迫られる局面が訪れるだろうと思っています。つまり、ユーロはもっともっと下がるでしょうし、世界の株価も大きく崩れることとなると思います。しかし、そう遠くない先にそれが訪れると予測していたとしても、今すぐに全てを売ってしまって相場に勝てるかというと、そうではありません。

相場は振り子のようなものです。一方的に動くには限界があるのです。特に為替市場は2国間通貨の価値の綱引き。ゼロになることは絶対にありませんので、行き過ぎた値動きの後には修正が起こるのです。ユーロ/ドルの月足チャートを見ていただくとこれほど欧州債務危機が騒がれているのに、ユーロ/ドル相場は右肩下がりではあるものの大きなレンジ相場を形成しており、大きく崩れていないのです。リーマン・ショック時の安値を下回ってはいませんね。

そして、ユーロ/ドルだけでなく、ドル/円もオージー/ドルもダウ平均も日経平均株価も直近安値が2012年6月1日(日経平均株価は、翌営業日の6月4日)と見事に揃っています。この日何があったかというと米国の雇用統計発表日です。数字が予想を裏切る悪い結果となったことでドル売り、株売りが進行したのですが、この日を境にマーケットは上昇トレンドを形成しているのです。2012年6月18日、ギリシャがユーロを離脱することになるかもしれないという爆弾級のネガティブニュースが飛び出す可能性があったのに、です。相場は不透明要因を嫌い、結果がわかるまで売られ易くなるという特徴がありますが、結果が見えないのにマーケットは6月1日を起点に上がり出した...。

これが何を意味するのでしょうか。個人的には一度大きな戻りが入るのではないかと思っております。今週は利下げが予想されるECB理事会や米雇用統計など大きなイベントが目白押しです。利下げは一見ユーロ売り要因のようですが、緩和策としてマーケットには歓迎されるでしょうし、週末の雇用統計が悪ければ悪いほどマーケットはQE3期待に傾く、ということでネガティブには作用しないものと考えられます。欧州、アメリカ、そして日本も緩和姿勢です。世界が手を組んで緩和に動いている今、EU首脳会議での合意をリスペクトして時間を買って下げ止まるなら、マーケットは大きく戻る局面に入るのではないだろうか、と私は予想しています。

行き過ぎた相場は修正される、ということで今週の月曜のユーロ相場始めマーケット全般、先週末の上昇の半値近くを削る下落となっていますが、6月1日の安値を下回ることがなければ、マーケットはリスクを取る方向に回帰していくのではないでしょうか。ただし、長期トレンドではなく短中期の見方ですけれど・・・。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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