第20回 ユーロはまだまだ買えない?!これだけの理由【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第20回 ユーロはまだまだ買えない?!これだけの理由【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】


ドル/円相場が再び77円台へ、円が急伸した週明け月曜日。子供たちは夏休み入り、この週末には隅田川の花火大会が開催される頃となりいよいよ夏本番ですが、この夏マーケット関係者はうかうか休んではいられないかもしれません。(このところ毎年そんなムードですが...)

円高なのではありません。犯人はユーロ。23日月曜ユーロ/円は94円台まで下落、11年8ヶ月ぶりの安値へと下落しました。ユーロドルも1.20台まで下落し、リーマン・ショック後の安値1.18ドルに迫ろうとしています。

先週末、スペインのバレンシア州が債務を返済するため中央政府の支援を要請しました。5月にカタルーニャ州が中央政府に支援要請をしたことでマーケットがリスクオフ(売り)に傾いたことは記憶にあたらしいのですが、今回は他にもスペイン南東部のムルシア州も中央政府へ支援要請の可能性を検討していると報じられています。つまりスペインではそこら中が財政破綻の危機に陥っており、中央政府がこれら地方財政の支援に追い込まれる可能性が広がっているのです。これを受けてスペインの10年債利回りは先週末に一時7.317%と、ユーロ導入後の最高水準を更新。ユーロ主導で売相場となり、ドル高、円高のリスクオフ相場が鮮明となって来ました。

問題はスペインだけではありません。ECBは2012年7月25日より『ギリシャ国債と同国政府が保証する資産』を担保対象から除外すると発表。これはアテネを訪問しているトロイカ調査団の調査が終了した後に彼らの見解を聞き、改めて判断が正しいかどうかを検討するそうですが、要するにギリシャが緊縮策に後ろ向きで文句ばかり言うようならもう先はないということ。ドイツのシュピーゲル誌はIMFがEUのトップに対し、ギリシャ支援を停止する旨を通告した模様だと報道しています。こうした流れを受けて欧州ではギリシャのデフォルトとEU離脱は避けられないだろうという見方が広がっているのだそうです。

ドル/円が77円、ユーロ/円が94円、11年ぶりの安値だと聞けばそろそろドルやユーロを買ってみようか、という気持ちになりますが、私は時期尚早かと思います。「さすがにこれは安すぎるだろう」というレベル感だけで外貨を買うスタンスはお勧めできません。今、何が起こっていてこの安値を示現したのかをきちんと理解していれば、まだユーロやドルを買う事ができないと思います。

IMM通貨先物ポジションを見ても、ヘッジファンドなどの投機筋のユーロ売りは一向に減る様子がありません。なぜ彼らがユーロの売りをやめないのか?!2012年7月5日ECB・欧州中央銀行は中央銀行の預金金利をゼロに引き下げました。これをキッカケにしてユーロを借りてユーロ圏以外の高利回り資産を購入するキャリートレードがマーケットのトレンド(主流)となってしまっているのです。

加えて、今日、スペイン証券取引委員会がすべての株式を対象に3か月の空売り禁止措置を発表しました。(イタリアも同様の発表をしています。こちらは金融と保険セクター株のみで5日間に限定の模様)スペイン株式市場の流動性はそれほど大きくはないかもしれませんが、今一番売りたいホットな市場の売りがロックされてしまうと、投機筋は外為市場でユーロを売ってくる可能性も出てきます。関係者の間ではギリシャ、キプロス、ポルトガルまではEUを離脱するだろうことが既定路線であると考えられているという話もあり、これまで経験したことのない未曾有の危機を前に、まだ史上最安値を更新していないユーロを買う戦略がうまくいくとは思えません。

今、ユーロを買う材料はほとんどなく、もし上がることがあるとすればショートカバー(売り方の買い戻し)くらいでしょう。ショートは相当溜まっていますので、思わぬ値幅で高騰する可能性もあり、それを狙って買いを入れたくなる気持ちも理解できなくはないのですが・・・。環境から考えてショートカバーは一瞬のうちに終わってしまうと思われ、ちょっとリスクが高すぎるのではないでしょうか。そういう局面があればユーロの戻り高値を売って、史上最安値を目指す動きをコツコツとっていくのが王道の戦略かと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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