マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先週のコラムで「ユーロが買えないこれだけの理由」として、ユーロの先行きに悲観的な見通しを書きましたが、私がユーロに買い目がないと悲観した途端にユーロが急反騰。見事な逆指標っぷりを発揮してしまいました。仕事柄、色々と専門家の方に見通しを伺う機会が多いのですが、先週始めまでは誰に聞いてもユーロに悲観的な状況で、まさに「総悲観」。
ある番組でも「総悲観は買いといいますが、それでも今慌てて買うことはない。不透明な悪材料が出尽くすまでは買えないですね」などと話していた矢先の急反発でした。総悲観は買い、とまで言っておいて、です(笑)。私自身も、これまで順調だったトレードも大失敗、ユーロの売りポジションは見事に踏み上げられてロスカットの憂き目にあいました。
最も重要で、最も信頼のできる指標である「センチメント」の偏りを軽視した結果です。
相場格言に「人の行く裏に道あり花の山」という言葉がありますが、投資の世界では人と同じ道を歩いていて安心していては行けないのです。皆と同じということは大衆であるということ。皆がユーロには買う材料がない、ユーロは売りだ、と唱え始めたら、売るのではなく買う勇気が必要なのだと改めて思い知りました。
全く良い材料がない時、皆が売りに傾くと買い手不足でなかなか下がらなくなります。ギリシャがEUから離脱するかもしれないというユーロという体制の崩壊にも近い状況になっていても、リーマン・ショック後の安値すら示現せずユーロ/ドルが1.20台を割ることがなかったのは、売りたい人は皆売ってしまっている状況だったということでしょう。
売りでパンパンに膨れ上がったポジションがあるところに、ESMに銀行免許を、とか、ECBがスペインなど問題のある国の国債を購入する準備がある、といった救済策の実施を示唆する要人発言があれば、敏感に反応して逆に動くことくらいは予想がついたことでした。振り返ってみればこんなに解りやすかった相場はないのですが、見事に弱気センチメントに流されてしまい、「どんな相場でも市場の声を聞き(センチメントを探り)大衆の立場に陥っていないか」を認識することができなかったことを反省しています。
ではここからです。このまま状況は好転し、ユーロはどんどん上がっていくでしょうか。
今週はイベントが盛りだくさんです。
8月1日(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の開催が予定されています。先週WSJ誌などにFRBが追加緩和策の実施に傾いているとの記事が掲載されたことから、市場にはQE3(米国の量的金融緩和政策第3弾)への期待が高まってきています。9月のFOMCでのQE3実施の予想が大勢ですが、今週のFOMCでもバーナンキ議長の声明が市場の緩和期待を維持できるものとなるかどうかが焦点となりそうです。ダウ平均が再び13,000ドル台に乗せてきていることを考えると、市場はやはりリスクを取って追加緩和策を催促する相場に入ってきているように感じます。
そして今後数日以内にEU圏首脳が対応策を決定すると表明している欧州では2日木曜、ECB(欧州中央銀行)理事会があります。ECBのドラギ総裁も「あらゆる措置を講じる用意がある」と述べており、今回は追加利下げや国債買入れの再開などの政策が打ち出されるとの期待が高まっています。
私は、ここまで市場の期待を高めておいて何も出ないということは考えにくく、いよいよスケールの大きいユーロのショートカバーがユーロを上昇させる相場となる可能性が高まってきていると思っています。
追加緩和策は中長期的にはユーロの流動性供給なわけですからユーロの下落要因ですが、今そこにある危機からの脱却はユーロ崩壊に向けてユーロを売り持ちしていた向きの買い戻しに繋がり、短期的にはユーロの上昇要因となると考えられます。ただし、今週末3日(金)には米国の7月の雇用統計が発表されます。
アメリカや欧州による金融政策が市場を支える要因となったとしても、米国の雇用という実体経済を表す指標が、マーケットに冷水となるかもしれません。欧州救済策、金融政策への期待からユーロが買い戻され、米株、欧州株などが上昇するリスクオン相場となるだろうと見られますが、まだまだマーケットが確信を持って上がる地合いではなく、神経質に乱高下を繰り返しながらの戻りとなっていくと思われます。今週のECB、FOMCが市場の期待に応えられなかった場合は、その限りではありません。くれぐれも高値掴みはせず、押し目を待つスタンスがよいのではないか。と思っています。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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