第22回 8月円高アノマリー通りになるか、ポイントはユーロの動向【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第22回 8月円高アノマリー通りになるか、ポイントはユーロの動向【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マーケット関係者の間では、8月は円高になりやすいというアノマリー(合理的な説明ができない現象)はあまりにも有名です。1990年から過去21年を遡って検証するとドル/円相場が円安だったのはたった5回。17回円高だったということで円高確率は実に77.3%。アノマリーとはいえ、8月は年間で最大の円高確率を叩きだしてきているのですから無視できないですよね。

その背景には米国債の償還による資金返済と利息が米ドルで支払われるため、その資金を円に替える際に起こる円買い圧力が一時的な円高に繋がるとの解説がありますが、償還分は再投資されるとか、利払いの円転のボリュームは市場にインパクトを与えるほどではないなど、この説に否定的な見方も多くあります。

また、8月はなぜか世界のマーケットにインパクトとなるような事件が起こることが多く、1971年のニクソン・ショック、1990年のイラクのクウェート侵攻、1997年アジア通貨危機、1998年ロシア危機、2007年仏パリバ・ショック、2011年米国債務上限問題から米国債の格下げ等、何か不吉なことが起こりやすい月だという認識もマーケットに広がっています。

円高は「リスク回避」時に進みやすいのですが、もし、アノマリー通りに2012年8月も円高に進むようなことが起こるとするならば、その隠れたリスクとは何でしょうか。解決の糸口が見えない欧州債務問題などいくらでもマーケットを揺るがすネガティブ材料はありそうですが、今年も何か起こって円高が進行する可能性はあるでしょうか。

私は今年のドル/円相場はユーロの動向を睨んでの推移となるだろうと思っています。そしてそのユーロは、一度大きな買い戻しが入ると思うのです。その理由は、先週の相場でユーロ/ドルが1.20を割り込むような崩壊に繋がらなかったこと。

2012年8月2日(木)のECB理事会はまさかのゼロ回答。前週にドラギ総裁が「ユーロを救済するためにはなんでもやる、私を信じてくれ」といった趣旨の発言をしたことから、思い切ったユーロ救済・追加緩和策が出ると市場の期待が高まっていたにも関わらず、です。期待を裏切られた格好ですのでユーロは一時大きく売られました。発表翌日の東京市場では「やはりユーロはもうダメだ、ユーロは売られ続ける」という解説一色となったのです。

ところが、ユーロ/ドルはまたしても1.20ドルを割らずに反転しました。翌日に発表されたアメリカの7月の雇用統計の好結果を受けてユーロには猛烈な買戻しが入っています。米国の材料を受けて「ドル」ではなくて「ユーロ」が大きく上昇するというのが腑に落ちない気もしますが、「リスクオン相場」と呼ばれるリスクを取れるような良い地合いの相場の時は「ドル安円安」となる、と考えれば不思議はないのではないでしょうか。また雇用統計の結果を受けて、米株も商品も大きく買われました。つまり、前日にユーロ救済策が出るだろうという期待を裏切られたばかりなのに、市場はユーロを売り込まずに買い戻しに転じ、さらにリスクアセットを買う動きに出たのです。これが何を意味するのでしょうか・・・。

今回のECBへの失望にもユーロ崩壊へ繋がらなかった地合いの強さを考えると、ユーロ安シナリオは一旦お預け。最終的には史上最安値を更新するユーロ安となると思っているのですが、目先はスケールの大きな買い戻し相場となるように感じています。つまり短期的にはリスクオン相場となるだろう、ということですので株高、ユーロ高、ドル安、円安なのです。

となると、ドル安、円安ですからドル円相場はこう着してしまって動きにくくなるような気がするのですが、ドル安よりも円安圧力が強まる可能性があるとするなら為替介入でしょうか。(今週の日銀の金融政策決定会合で日銀が追加緩和に動く、ということがあればリスクオンの理想的なシナリオとなりますが、先週欧州も米国も動かなかったため、日銀が緩和に踏み切ることは考えにくいでしょう。)

この8月のドル/円相場のスタートは78円10銭近辺。この水準から更に円高で終わるとなると77円台、76円台ということになりますが史上最高値圏での推移ですので、急激な円高進行があれば日本の当局からの円売り介入が入ることも考えられます。このところのドル円相場での介入を振り返ると、介入があれば3円近くは円安に持ち上げられています。介入があれば8月単月としては円安で終わりますね。もし介入がなくても「呪われた8月」などと一般紙までが8月の円高リスクを報道している今年、個人的には、アノマリー通りに円高で終わる可能性は低いのではないか、と思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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