第24回 アノマリー破りのドル/円レンジ上放れ、円安トレンド継続となるか?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第24回 アノマリー破りのドル/円レンジ上放れ、円安トレンド継続となるか?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】


米債の償還利払いによる円転、8月円高アノマリーなどを解説した記事が新聞にも掲載されるほど「円高の夏」への警戒が強まっていたのですが、ドル/円相場は円安方向にレンジブレイク。「呪われた8月」とか「円高の夏」なとど多くのメディアが8月の円高を取り上げ、警鐘を鳴らしていましたが、広く認知され警戒が強まれば強まるほど相場は逆に行くものです。今年はあまりにも警戒が強かったように思いますが、このまま行けばアノマリー破りで8月は円安で終わるかもしれませんね。

しかしずっと揉み合いが続き方向感のない動きを続けていたドル/円相場が、何故この時期に動き出したのでしょうか。特にお盆時期は市場が閑散となるために荒れがちで、円高のリスクが高いとされているのですが、今年のお盆休み中は、穏やかながら確りとした相場でまさに閑散に売りなし。ドル/円での円安進行だけでなく、米株も堅調でこの5月の急落前の年初来高値を目指す勢い、コモディティも穀物や原油が上昇基調にあり、全般リスクオンムードとなっています。

これまではアメリカの経済指標も悪く、景気の先行懸念からQE3と呼ばれるアメリカの追加金融緩和策への期待が相場を下支えしていたのですが、8月に入って発表された7月の米雇用統計、小売売上高、卸売物価指数などの数字が市場予想を上回る結果となったことから、緩和頼みではない実体経済への素直な評価からリスクを取る動きが出始めています。これまで避難先だった米国債から資金はリスク資産へ流れ始めており、米国債金利が急騰、日米金利差からドル/円が上昇を開始したのです。避難先だったアメリカ、ドイツ、日本の債券市場は異常な低金利状態が続いており債券バブルの様相を呈していましたが、バブルがはじけた格好です。

追加緩和による過剰流動性相場からの力技での押し上げ相場ではなく、米経済指標を評価する流れでのリスクテイク相場ですので、この流れが長い上昇トレンドに繋がる可能性へ期待は膨らみますが、果たしてこの流れは継続するでしょうか。

このリスクオン相場が続くためには欧州からの火種が噴出しないことが必要となってきます。8月のECB理事会で具体的な高債務国への救済策や緩和策実施が発表されなかったことから、マーケットの失望を買ったユーロですが、それでもユーロ/円も、ユーロ/ドル相場も直近の安値を割り込むことなく、一旦底入れしたようなムードが出てきました。

また独シュピーゲル誌が『来月のECB理事会で、南欧州各国の国債購入をECBが行う場合、それぞれに国の長期金利上限を設定し、それを越える場合に自動的にECBは国債購入に動く可能性がある』という観測記事を出しユーロの買い戻しが進みましたが、20日(月)ECBはこの報道を否定しています。それにもかかわらず、ユーロは大きく崩れることがなくなってきており、ネガティブ材料への耐性が強まってきているように感じます。また休暇明けのメルケル独首相がギリシャ救済の条件緩和を検討しているといった報道もあり、欧州首脳陣はこれ以上問題を拡大させぬように連携し始めたようですので、少なくとも2012年9月12日(※)まではマーケットに大きなリスクとなるようなニュースは出てこないような気がします。

欧州からネガティブ材料が出ないことを前提とするならば、今後のポイントは米経済指標。いいものが出れば素直にリスクオンでリスクアセットに資金が流入し、金利差拡大からドル/円が買われると思います。本邦輸出勢のドル/円売り圧力も強いと思いますが、ヘッジファンド勢もドル/円ロング戦略に転じているという話も耳にしました。これまでのようなQE3頼みの歪んだ買いではなく、健全なリスクテイク相場がしばらくドル/円を支えていくものと思われ、個人的には、短期的にはドル/円相場は押し目買い戦略で行こうと考えています。

※2012年9月12日はドイツ憲法裁判所が、ESM設立を定めた条約がドイツ憲法と整合性を持つかどうかについて判決を下すことになっており、これが違憲とされればマーケットは大荒れとなるでしょう。ドイツはESMの最大出資国であり、ESMなしでは 高債務国スペイン・イタリアを救済することができなくなるからです。翌日13日はアメリカの金融政策決定会合、FOMCがあり日程が重なっているので要注意。9月に入るとまた重要イベントが目白押しですので、押し目買い戦略の目処は2012年8月31日のジャクソンホールでのバーナンキ議長の講演前まで、としておきます。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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