第11回 金、1700ドル突破して急騰中 【豊島逸夫の金道場】

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第11回 金、1700ドル突破して急騰中 【豊島逸夫の金道場】

ジャクソンホール、ECB南欧国債買い取り、そして米雇用統計悪化の「三段跳び」で金価格が1730ドル台まで急反発中だ。

ECBの国債買い取りは不胎化つきなので「ユーロばら撒き」とはならず、米国型のQEとは異なるが、利下げも含め金融緩和バイアスは金にとっても追い風である。そもそもドイツ連銀がECB国債買い取りに対する「抵抗勢力」であったことは、インフレ・バイアスを懸念するが故だ。ワイマール時代のハイパー・インフレの記憶が未だに残る国である。そのドイツで金需要量が過去一年で30%急増して中国、インドに次ぎ世界第三位の金需要国である。(下記統計参照)

そして、問題はやはりQE3. 米雇用統計でQE3或いは時間軸の2015年への変更などを金価格は既に織り込んでいる。故にサプライズがあるとすれば、QE3に言及なく、梯子を外された場合だ。しかし、そのケースでも市場は「切り札温存」と見て、期待感は残るであろう。底は浅そう。従って、その場合の下げは一過性で買いのタイミングと私は、見る。
趨勢は1800ドルターゲットで動いている。
下値は、中国やインドがガードしているのではないだろうか。しかし、昨年に比し、下値サポートが新興国買いで「鉄板!」とまでは言い切れぬ。

最新(2011年7月~2012年6月)の一年間の国別金需要トップ3の推移を見てみよう。

     2011年7月~2012年6月   2010年7月~2011年6月

インド  1154.9トン             773.5トン(33%↓)

中国   744.3トン             786.0トン(6%↑)

ドイツ  119.0トン         154.5トン(30%↑)

中国がインドを抜き、遂に金需要・生産両面で世界一の座に。
インドが経常収支赤字対策として金への課税強化に動いたことが響いている。一方、中国では、段階的金取引自由化が進行中。中国経済減速のマイナス効果を上回る。
総じて、中国とインドの二か国で前年期は1899.2トンだったが、今年期は1559.5トンと16%減少している。同時期の世界金生産量は2822トンであるから、前年期はその67%を買い占め、今年期は減少とはいえ、55%と半分以上を買っているわけだ。

なお、インドはルピー安により現地価格が史上最高値を更新しているという理由もある。元来が結婚式など宗教文化に根差す金買いなので、「買わなければ花嫁の父の沽券にかかわる」ゆえ、結婚式までには買わねばならぬ。いずれ買いが入るが時間的ラグがあるということだ。過去も需要急減の後、急増の四半期を迎えるパターンが見られた。

総じて、1600ドル台では新興国の買いが入り、1500ドルでは、それが急増する。下値のガードは昨年より弱いが、絶対的なサポートは依然存在する。

さて、本日、筆者の新著「不安を生き抜く 金読本」(日経BP社発行ムック本)が発売された。

シンガポール豪邸でのジム・ロジャーズとの対談、アラサー女性との女子会、日経CNBCでの筆者セミナー採録金(いつ金は下がる)など。筆者の一押しは写真入り南欧&中国現地レポート(アテネ、リスボン、ダブリン、北京など)。
編集制作陣は全員女性なのでこれまでにない金の本となったので、まずは本屋で手に取ってご覧いただきたい。

なお、丸善 丸の内本店(東京駅前)で9月26日19:00~に新著「不安を生き抜く 金読本」発表講演&サイン会が開催される。但し、この入場券は同店での購入者のみ。(要整理券・電話予約可) ウェブサイトをスクロールしてご覧ください。

コラム執筆:

豊島逸夫(としま・いつお)  豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに 金の第一人者として素人にも分かりやすく 独立系の立場からポジショントーク無しで 金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。

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