マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
今週末10月5日、アメリカから9月の雇用統計が発表されます。雇用統計は為替や債券、株式などあらゆる金融関係者の注目度ナンバーワンの指標です。何故注目が高いか、というと単純に雇用統計の数字がマーケットを大きく動かすからですが、なぜ米国の雇用があらゆる市場を動かしてしまうほど重要なのでしょうか。
アメリカの中央銀行制度の運営機関であるFRBには「雇用の最大化」と「物価の安定」と いう2つの使命があります。これをデュアル(2つの)マンデート(使命)と呼びます。実はこの2つ の政策目標 を同時に達成するのは容易ではなく「雇用の最大化」、即ち景気に配慮すれば一層の金融緩和が求められますが、緩和策を取ればインフレに繋がりかねないため、物価情勢を鑑みると安易に緩和策には踏みきれないというジレンマもあります。
ガソリン価格が1ガロン4ドルにも届こうという高水準に留まる中、FRBは9月のFOMCでQE3に踏み切ったのですから余程FRBは雇用情勢には懸念を抱いていたのでしょう。バーナンキ議長は繰り返し「労働市場の改善」について述べていました。QE3の終了時期は「労働市場の改善が見られるまで」。つまり期限を決めていません。米国雇用は、世界が注目するFRBの金融政策をも変えてしまう重要な指標なのです。
FRBの使命に雇用の改善があるというのも注目度が高い理由のひとつですが、発表されるのが毎月の第1金曜日と、他のどの指標よりも前月の数字が出るのが早いということも重要視される要因です。雇用統計は前月の米国の景気はどうだったのか、最も早くわかる指標でもあるのです。アメリカは景気が少しでもよくなると直ぐに人を雇い、逆に景気が少しでも悪くなると容赦なく解雇するお国柄。雇用情勢は景気の状態を的確に表すとも言えるのです。このデータが翌月どの指標よりも最も早く出てくるのですから注目せざるを得ません。雇用統計の労働時間が鉱工業生産指数の算出に利用されたり、労働投入量がGDP予想に利用されるなど、他の経済指標にも与える影響は大きく、さらにアメリカの金融政策をも動かしてしまう可能性があるのですから。
雇用統計は非農業部門雇用者数、失業率、一人当たり単位労働時間など10数項目からなっていますが、その中でもっとも注目されるのが、NFP。非農業部門雇用者数です。この数字が市場予想を上回ったり、あるいは下回ったりすると、その予想との乖離が相場を動かす要因となります。米国指標ですから基本は米ドル。米ドルが大きく上昇したり下落したり乱高下しやすくなるのです。この事前予想というのは1週間前くらいには金融機関やリサーチ機関によって出揃いますが、その平均がマーケットのコンセンサスとなって、相場に織り込みが始まります。予想が良ければドルが買われる傾向が出てきますし、悪ければドルが売られる傾向に。そしてこうして織り込まれてきた相場に、予想から乖離した結果が出てくることとなればマーケットはその瞬間から逆流するというわけです。
なお、雇用統計の2日前にADP雇用統計という指標が発表されますが、この数字が雇用統計の数字の予想に大きく影響してきます。ADP雇用統計とは、米国の給与計算アウトソーシング会社が発表する民間発表の雇用調査レポートですが、2006年5月から開始された比較的新しい経済指標で、政府機関の雇用が含まれていないため、雇用統計の先行指標にはならないという見方もあるのですが、それでも関係者の注目は高く、ADPの内容が良ければ雇用統計の数字にも期待が高まりドル買いムードが醸成される傾向があります。今週、10月3日(水)にADPが発表されるので注目してみてください。
そして今週末10月5日に発表される9月の米雇用統計については、NFPが11万5000人増、失業率は8月から0.1%ポイント悪化して8.2%に達すると見込まれているようです。これは10月1日(月)時点でのコンセンサスですので、これは雇用統計発表の金曜が近づくと修正されますので雇用統計発表当日まで日々チェックし直しておいたほうがいいでしょう。
ADPの数字が出れば、それに沿った予想の修正もあるかもしれません。予想が良くなればなるほど発表された数字への失望度が高くなり、発表後のドル下落のリスクとなります。雇用統計は発表の瞬間大きく為替を動かしますので、スキャルパーと呼ばれる超短期筋には楽しみな投資機会ですが、スィング派でじっくり値幅を取るトレードがしたいのであれば、値動きが収まってから参入するほうがリスクは少ないと私は、思います。私は雇用統計でトレードはしませんが、乱高下で思わぬ高値、安値を示現する可能性が高まるので、チャートをみて「こんな安値でドルが変えたらいいな」というようなポイントに指値で注文を置いておくことも。リアルタイムにマーケットを見ていると、興奮しすぎて要らぬトレードをしてしまいがちなので少し距離を置くようにしています。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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