第32回 何を見て取引すればいいの?!通貨ペア毎のトレード指標【2】 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第32回 何を見て取引すればいいの?!通貨ペア毎のトレード指標【2】 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

~ユーロ/ドルの相関指標~金相場、CRBインデックス~

前回コラムからの続きです。
トレードの際に相関性が高いことから指標とされるものをご紹介していますが、前回は、今、ドル建ての金価格の動向がユーロ/ドル相場と高い相関があるとして注目されていると書きました。ドル安となれば金高になるということですが、ただし、これは他にユーロの変動要因となるようなインパクトのあるニュースがないことが前提です。スペイン国債利回りが上昇した、とかジャンク級に格下げされた、というようなネガティブ材料が飛び出した場合、金との相関など関係なしにユーロは売られるでしょう。ユーロが下がることによってドル高となる為、結果的に金も下げるかもしれませんが、逆に信用リスクが高まることが金にプラス材料と受け止められれば金市場に逃避資金が流入し金価格は暴騰するかもしれません。金は金融危機後、世界が量的緩和策に踏み切った頃から無国籍通貨と呼ばれ、希薄化する通貨価値の代替投資先として注目されています。つまり発行体リスクのない通貨というような意味合いを持つようになったのです。

今、世界が問題視しているドルやユーロへの信認が著しく低下するようなニュースで上昇することもあるため、必ずしもドル安にリンクするというわけではないことも覚えておいて下さいね。ユーロ/ドル相場とドル建て金価格の相関というのは、特別なニュースがない安定した状態における状態でのドルの変動に金価格がリンクし、逆を言えばユーロと順相関であるということです。

またユーロ/ドル相場はCRBインデックスと呼ばれる商品インデックスにも高い相関が見られます。商品市場は外為市場とは比較にならないほど小さなマーケットで流動性も低いため、リスクアセットと捉えられています。リスクアセットである商品が上がる、つまり資金が流入するということはリスクを積極的に取れる環境になったと考えられるため、「リスク・オン」時は商品高、リスク・オフ時には商品安という値動きとなる傾向が強まります。

通貨市場ではリスク・オン時にはドルが売られ、リスク・オフ時にはドルが買い戻されます。理由は、ドルが基軸通貨であるためです。リスク時にはリスクを回避しようとキャッシュ比率を高めようとする金融機関が増えます。ドルを手元に置こうとする動きが膨らむためドルの買い戻しが起こるということです。現在起こっているドル安はQE3という量的緩和策が影響しているという側面もありますが、欧州の危機から史上最大規模に売り込まれてきたユーロが買い戻されるということでもあります。要するにリスクが後退しているという状況。リスク・オン時にはユーロが上昇し、リスク・オフ時にはユーロは下落するのです。

CRBインデックスは、流動性の小さい市場に投機マネーが入り込むことで大きく動く側面があるため、資金が流出する時もまた大きな動きとなります。株式市場よりも通貨市場よりも早くリスクに敏感に資金が逃げる傾向がありますので、CRBインデックスが下落を始めたら、ユーロも下がる可能性を考えてみます。

ただし、商品価格は基本的には需給が価格を形成していくものである、ということもお忘れなく。今夏とうもろこしや大豆などの穀物が暴騰したのは干ばつからの収穫への懸念からでした。また、南アフリカのプラチナ鉱山のストライキからプラチナ供給への懸念が広がりプラチナが暴騰したのも記憶に新しいですね。このストライキはまだ他の鉱山へと波及し終息していません。原油市場はシリアやイラクといった地政学リスクも材料視されますので、商品市場が常にリスク・オン、リスク・オフだけを材料に動くわけではないことを念頭に見て下さいね。

また、CRBインデックスは穀物や農産物のウエイトも高く、穀物銘柄は過剰流動性マネーの流入で動くというより需給が価格を動かすという性質が強いことからあまりCRBインデックスをリスク・オン、オフの指標としてみるのは正確ではないという指摘もあります。

しかしながら、南アフリカの鉱山ストが出てプラチナが急騰しCRBインデックスが上昇したタイミングではユーロも急騰していたわけで、不思議とその需給バランスを大きく崩してしまうようなニュースが出て商品が動き出す時には、ユーロもユーロの独自要因で同じ方向に動き出したりするのです。こうした符合が何故起きるのか、相場というものは実に摩訶不思議ですが、売られ過ぎていたものが買い戻されるタイミングだった、とシンプルに見ることで相関する通貨の先行きが見えてきたりするものです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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