マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
◆豪ドル相関指標~米株、鉄鉱石、中国、原油、金利
リーマン・ショック以降、先進国の政策金利がほぼゼロ金利に引下げられる中、高金利通貨であるブラジル・レアルや南アフリカ・ランドなどが人気を集め、中長期でスワップ金利を受け取ることを目的にした高金利通貨の買いが人気化していました。先進国の景気後退が懸念されていても新興国の成長は続くだろうという期待もあったかもしれません。しかし現実には先進国経済が落ち込むと新興国の成長にも陰りが見え始め、金利差を狙って長期投資したつもりが通貨の下落によってキャピタルロスが生じてしまうといった事態になってきています。
流動性があまり大きくない新興国通貨は人気化し高騰するのも早いですが、落ちる時のスピードも早いという特徴があるので注意が必要なのですが、資源国通貨として、また高金利でもある通貨としてFX取引では個人投資家に絶大な人気を誇る「豪ドル」もまた、その人気から流動性が高まってはいるものの、ドルやユーロと比較すると小さい市場であることから、リスクに敏感に動く特徴があります。市場関係者の中には「豪ドル」をリスク・オン、オフの指標としてウォッチしている向きがあるくらい「リスク敏感銘柄」となっています。ではこの豪ドルの値動きは何と相関して動いているのでしょうか。
◆鉄鉱石、中国経済指標
豪ドルは、資源国通貨であることからコモディティ価格や景気の先行きなどに反応して動きます。特に世界最大の鉄鉱石生産国であることから鉄鉱石価格の行方が豪ドルの先行きに影響を及ぼしています。オーストラリアは9月に、最大の輸出相手国である中国の需要鈍化で鉄鉱石価格が下落し鉄鉱石輸出による収入の見通しを下方修正、この発表から豪ドルは売られる局面に入ってしまいました。中国の景気減速から鉄鉱石価格が下落してしまったのです。鉄鉱石価格動向は最大の輸出国である中国経済の動向にも関わっているため、豪ドルの先行きには中国の景気指標も重要な役割を担っていると言えるでしょう。中国の重要経済指標が発表される時は豪ドルも大きく動く為、注意が必要です。
◆原油、金価格
また、リスク・オン、オフで市場が大きく動く商品市場。流動性が低い為、投機筋の動向がいち早く反映されるため、原油や金といった商品価格動向がマーケットの先行きを指南するケースがままあります。豪ドルも流動性がドルやユーロと比較して高くないために投機マネーによる変動が激しい特徴がありますが、投機筋はリスク資産を買う時は一斉に買い、売る時は一斉に売る傾向があるため金や原油価格の値動きに連動して動く局面が多々あることも覚えておくといいと思います。原油高なら豪ドル高、金高なら豪ドル高です。ただし、これは鉄鉱石のような実需絡みの動きとは違うので中長期的な値動きが合致するという性格のものではなく、投機筋の動向が反映されやすいという話ですので、同じように動く局面がある、という超短期的な指標として見て下さい。
◆金利市場
オーストラリアは、10月2日の金融政策会合で政策金利を予想外に0.25%ポイント引き下げ3.25%に引下げました。世界景気、とりわけ中国景気の減速による鉱業部門への警戒と資源価格の下落が主因ですが、市場では更なる利下げの予想が大勢です。利下げ予想がどこまで現在の豪ドルに織り込まれているかどうかを見極めなくてはなりませんが、利下げされるであろう通貨が買われるケースはあまり多くはありません。豪ドルの先行きを見る指標の一つに、オーストラリアの金利先物市場をウォッチしていくのも重要な局面となってきています。
◆米株
また、最大のリスク・オン、オフの指標は「米株」です。世界の金融不安の発端はサブプライム、リーマン・ショックからでした。米株の先行きは全てに通じます。米株が堅調であれば、リスク・オン、米株に変調があればリスクオフです。米株と豪ドルは同じように動くことは大前提であり、それに加えて、中国経済のリスクも抱えていることを考えると、ここから先大きく上げるためには米株が堅調なまま、中国が立ち直りを見せなくてはならず、ややハードルが高い印象。個人的には豪ドルは買われる通貨から陥落したものと思っていますが、こうした指標と照らし合わせながら見通しを組み立てています。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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