マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
尖閣諸島近海の石油資源は知られているが、実は、中国は金資源にも注目している。筆者は、13年前から上海の金取引所や大手商業銀行のアドバイザーとして中国金市場に直接関わってきた。金という特殊ルートを通じ、北京の奥の院への出入りを許されていたといえる。
そこで、しばしば話題になったことが金の供給安定確保という命題。
国内金需要は近年急増し、最新需給データでは、遂に長らく需要世界一であったインドを追い抜いた。中国は金需要生産両面で世界一となったのだ。
しかし、国内金需要量が786トン(2011年7月―2012年6月)に対し、同国生産量は371.0トン(2011年)。絶対的な供給不足だ。今後も金取引規制緩和特需などで国内需要の更なる増加が見込まれる状況では、金供給安定確保が、資源政策としても外貨準備勘定での金準備増強の観点からも重要なわけである。
そこで、目をつけたのが、尖閣近辺の「海底熱水鉱床」。これは、金、銀、銅、亜鉛やレアメタルなどがマグマや地熱とともに熱水として噴出し、凝固して出来る鉱床のことだ。既に石垣島周辺海域では発見されており、日本側でも経産省が資源量の把握に動いている。同時に中国側でも、尖閣周辺の海底熱水鉱床については「熱い関心」を寄せてきたわけだ。世界的に見ても、通常の陸での金鉱山開発でめぼしい所は既に採掘が進み、将来的には海底金鉱山が最も有望視されている。
但し、原油は液体ゆえ海底から噴出してくれるが、金鉱石は固体である。しかも、金鉱石1トンから抽出される純金の含有量はせいぜい3-5グラム程度。ゆえに、海底金鉱山開発には膨大な初期投資が必要となる。
しかし、中国としては国家100年の大計の見地から、PC・携帯電話には不可欠の希少資源でもあり、3兆ドルを超す外貨準備の通貨分散の有力な選択肢である「無国籍通貨」としての金の供給確保に取り組んでいる。
金市場から見ても、中国が尖閣は譲れない理由があるのだ。
コラム執筆:
豊島逸夫(としま・いつお) 豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
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