第35回 大統領選挙後にドル円相場が動き出す?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第35回 大統領選挙後にドル円相場が動き出す?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

金利差であったり、貿易収支であったり、需給バランスだったり...。
為替の変動要因は実に様々で、あまりにも材料が多岐に渡るために何を指標に今後の値動きを予想すればいいのか見極めが難しいのですが、年単位で見る長期的な動きは「アメリカの政策」だとする説もあります。ドル/円相場の今後の行方もアメリカの通貨政策次第?!少し乱暴な見方ですが、確かにオバマ大統領は「輸出倍増計画」を掲げて自国通貨安政策をとって来ました。通貨安は輸出経済を伸ばし国内雇用を上昇させる効果があります。通貨価値が半分になれば輸出倍増となる・・・という話ですが、こうした大統領の自国通貨安が、ドル/円相場の70円台突入を招いたと説明されれば、それもさもありなんという気がしますね。

米大統領選挙年のドル/円は小動き。しかし選挙終了後から動き出すと翌年は大きな相場になりやすいというアノマリーがあります。1988年から2011年までの24年間のドル/円の年間平均値幅は19.2円ですが、1988年以降の米大統領選挙年のドル/円値幅平均は14.3円となっています。実際今年2012年のこれまでのドル/円相場の変動幅はたったの8.14円。2月の日銀によるバレンタイン緩和が作り上げた相場が今年一番の変動幅でした。このバレンタイン相場が終わった後は70円台での小動きが長く続きましたが、これは現政権がレームダック化する中で新たな政策は打ち出されないためテーマレスとなることや次期政権の通貨政策を睨んで動きにくくなったため、と見ることも可能です。つまり、大統領選挙が終わり、新大統領の政策が明確に打ち出されれば市場に新たなテーマが生まれ、それに沿ったトレンドが出来やすいということなのでしょう。

では、今回の大統領選挙後にドル/円相場はどのように動き出すのでしょうか?!

現在までのところの市場の見方は、現大統領オバマ氏が再選されればFRBバーナンキ氏によるQE政策に変更はなく、通貨安政策継続となることから円高ドル安相場継続、一方ロムニー氏が当選すれば「強い米国」政策復活との見方から円安ドル高に転換するというものです。ロムニー氏はバーナンキ氏を再任しないと明言していることから、現在の緩和政策が早期終了してしまうのではないか、という思惑もあるようですね。

しかし、これはあくまで市場が考えている「イメージ」に過ぎず、先取りして織込みたがる市場は、大統領選の結果が出た瞬間はその方向に動くこともあるかもしれませんが、それが今後のトレンドになるかどうかはわかりません。もし、オバマ氏再選となった場合、よし、これで現状のドル安政策継続だ!と円買いドル売りを再開させるのも短期的にはいいかもしれませんが、本当にオバマ氏が2期目同じ政策を取るかどうかはわからないのです。

というのも、2期目を務める大統領が次の4年に同じ政策を取るとは限りません。1940年台に大統領制が法令化されてから大統領任期を2期8年を務め上げた大統領は4人います。この4人の大統領、2期目はドル/円の通貨政策がガラリと変わっているのです。

レーガン大統領1期目はドル高政策をとっていたのですが、2期目はプラザ合意による劇的なドル安円高政策に転換しています。クリントン大統領1期目のドル安政策がもたらしたのは初めてドル/円相場が1ドル80円を割り込む円高でした。しかし、2期目はルービン財務長官によるBuyAmericaキャンペーンによるドル高政策に転換しています。ブッシュ大統領時代は明確な通貨政策を打ち出してはいないのですが、ドル/円の動きを見てみると1期目はドル安が進行(これは同時多発テロの影響もあったかもしれません・・・)そして2期目は円キャリー・トレードが起こり世界が好景気だと囃された時代、円安ドル高が進みドル円相場は1ドル124円台まで円安が進みました。

こうして見ると、オバマ氏再選でも通貨安政策継続とは限らないことがわかります。大きなトレンドを形成するような大転換を確認できると思われるのは、大統領が連邦議会両院の議員を対象に主要な政治課題を説明する1月下旬の「一般教書演説」。これを確認するまでは、あまりバイアスをかけないでおいたほうがよさそうです。

そして、もう一つ面白いことが。
2期8年を務めた過去4人の大統領、2期目にはバブルが起こっているのです。レーガン大統領はレーガノミックスに代表される大幅減税と積極的財政政策を実施し、双子の赤字をもたらしましたが、この政策はバブルをもたらしました。クリントン大統領時代にもITバブルが、ブッシュ大統領の時は、後に崩壊し世界の金融危機を招いた住宅バブルがありました。だからといってオバマ氏再選でバブルがやってくるというわけではありませんが、FRBはバブルをもたらすかもしれぬ通貨ジャブジャブ政策をとっています。ひょっとするとその効果がこれから出てくるのかもしれない...期待が膨らみますね。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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