第36回 トレンドを探る~ドル円相場は買いなのか売りなのか【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第36回 トレンドを探る~ドル円相場は買いなのか売りなのか【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

◆現状のマーケット環境
大統領選挙という大きなイベントを通過してマーケットは次なる焦点である「財政の崖」問題を意識し始めました。あるいは選挙後に堰を切ったように出てきたギリシャを巡っての欧州問題や世界景気後退への懸念も重しとなって、現在は残念ながら積極的にリスクを取って投資できるような環境にはありません。選挙直前から既に米株は崩れ始め、為替市場ではドルの上昇が顕著化してきています。オバマ大統領再選なら緩和政策継続、つまりドル安政策が継続されるという思惑からむしろドル売りとなってもいい局面なのですが、そうはなっていないのです。これは何を意味しているのでしょうか。

◆ドル高になるということは・・・
通貨高は基本的にその国の景気が良く、インフレ気味であるため資金を引き締める為に金利が高くなり資金が集まるという好循環で起こるケースもあるのですが、ゼロ金利政策下にある現在のアメリカで起こるドル高は、決して好循環からの通貨高とは言えません。景気が安定してくるとリスクを取る動きが高まりますが、その際に金利がかからないドルを借りて利回りのいい商品に投資するドルキャリートレードが活発化します。これは円に対しても積極的に行われた時代がありましたが、今は日米欧どの通貨もゼロ金利ですので、特に円だけが選ばれるということはありません。(過去に円だけが選ばれてキャリーされた時代がありました。この時ドル円相場は124円台まで円高ドル安が進行しています)

リスクを取って投資されたものですから、先行きに不安が生じると手仕舞う動きが起こりますが、この時、借りたドルが巻戻ってくるためにドル高となる動きが生じます。リスクを回避しようとする動きがドル高につながるのはこのためです。市場ではレパトリエーションと呼んでいます。今、ドルが上昇しているのは欧州問題の再燃からのユーロ売りで相対的にドル高となっている、という側面もあるかとは思いますが、同時にヘッジファンドの決算に絡む「45日ルール」も時期的に重なって、リスクを解消する手仕舞いの動きが加速しているという側面もあるのでしょう。

※ヘッジファンドの多くは、解約できるタイミングを四半期末に限定しており、投資家は各四半期末の45日前までにヘッジファンドに通告する必要があります。つまり毎年、2月15日、5月15日、8月15日、11月15日までに通告されるため、その前1~2週間は価格が大きく動きます。

手仕舞いの動き、欧州不安などから、他の通貨と比較して相対的にドルが強い状況となっていても、ドル円相場はまだ70円台後半。4ヶ月ぶりに80円台に乗せる局面も見られ、円安トレンドが発生しているようにも見えますが、ではここから本格的なドル円上昇となるのでしょうか。

◆ファンダメンタル分析から見ると
アメリカは9月、10月と2ヶ月連続で予想を上回る雇用の改善がみられ、7-9月のGDP速報値も2%成長と予想を上回る内容でした。ハリケーンサンディの被害が10-12月期のGDPにも影響するとも言われていますが、復興需要も出てくるだろうとも。一方の日本、7-9月期のGDP速報値は輸出の激減から▲3.5%と3期ぶりにマイナスに転じています。貿易赤字も拡大傾向、先般発表された9月の経常収支も赤字となってしまいました。ファンダメンタル面から現状の日米を単純比較すれば、米国買いの日本売りといった状況に変わってきています。ファンダメンタル比較だけで通貨変動を予想できるなら、いよいよ日本の通貨は売られる通貨へと歴史的転換を見せる可能性が高まってきていると捉えることもできるのですが、それでもまだ本格的な円安トレンドかと言われると、悩ましい動きになっていますね。

◆テクニカル面から判断すると
今年5月から長らく上値を抑え続けていた日足チャートでの一目均衡表の雲。これを10月に確りと上抜けしていますので、上値は軽くなっています。遅行線がロウソク足を確り上抜けていることもトレンドが好転していることを示しています。フィボナッチリトレースメントを使って、10月からのドル円の上昇を見てみると、半値押しでピタリと下げ止まり、現在は38.2%どころでもみ合っています。つまり、まだ円安のトレンドが崩れてしまったとは言い難く、押し目を形成しているところだとの判断もできますね。気がかりなのは一度上抜けた200日移動平均線を再度下回ってしまったこと。リスクを解消する動きが活発となる時はやはり円も買われるのです。円も巻き戻されていると見ることができるのですが、しかし、円だけが高くなるという環境ではなくなってきています。

財政の崖問題、欧州リスクなどまだまだリスクは山積しており、その度に円高が進む瞬間はあるかと思いますが、相対的に判断すればドル円の構造には変化が起こり始めており極度な円高が進行するとは考えにくく、現在の79円台は後から見ればいい買い場だった、と思える時が来るのではないかと思っています。また、中国との摩擦が数字となるのはこれからです。今期もマイナス成長となるだろうことは明白で、景気後退入りとなった日本、このままでは消費税増税は出来ないでしょう。政府は補正予算の編成も含め、追加的な経済対策の本格検討に入っています。今月にもまとまるという「日本再生戦略」関連の施策が円安を導くキッカケとなる可能性があることを覚えておきたい局面です。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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