マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
野田首相の解散宣言を受け日本市場が動き始めました。財政の崖問題を懸念し米株が下落を続ける中で日経平均は大幅上昇、ドル円相場もあれほど頭が重かった80円の大台をあっさり突破、81円台へと円安ドル高が進行しました。市場はすでに次の政権がどのような政策を採るのかを模索しており、次期首相就任が濃厚とされる安倍・自民党総裁が「日銀と協調しての無制限の金融緩和実施」「日銀はゼロかマイナス金利にするぐらいにして貸出を高めてもらいたい」などと発言したことで株高、円安が加速したものと思われます。
動き出した日本市場、選挙が行われる12月16日までこの流れは継続するでしょうか。
79円台をウロウロしていたドル円相場が81円台に乗せるまでの上昇となったこの相場の買いの主役が誰(何処)だったのかを考えてみるのも今後を紐解くひとつのアプローチです。例えば本邦輸入企業が物を購入する際に円をドルに替えるドル買いが積極的に起こっていたのであれば、これは買い切りの玉で反対売買によるドル売りは起こりません。つまり、今後の下落圧力が極めて低い相場であると言えます。例えばヘッジファンドなどの短期筋が今回の主役であった場合、これは短期であり投機ですからそう遠くない先で反対売買による手仕舞いが起こります。つまり手仕舞いが起こる時にドル円相場には大きな下落圧力が生じます。大きな相場となった際に、その相場の主役を探ることで今後の反落の可能性を探ることもできるのです。
となると、短期筋の買いはどの程度あったのか気になりますがヘッジファンドなどの投機筋のポジション動向が確認できる最新のIMM通貨先物ポジションは11/16 に公表されていますが、これは11/13時点におけるポジション動向です。解散発言が飛び出したのは14日、安倍首相の発言が15日ということを考えると、現在確認できるIMMポジションにはまだ日本発の政局絡みのドル買い円売りポジションは反映されていません。短期筋がこの相場でどのようなポジションを取ったか(ドル円を買ったのか、売ったのか)を確認できるのは今週金曜以降ということになります。しかし、各取引所は日々の売買データを毎日公表しており、売買高や総取組高の推移は誰でも見ることができます。直近の投機筋によるドル円相場の総取組高推移を見てみると、11/06 時点では16.1 万枚だったものが11/12 には15.5 万枚へと減少(この時は80.20円近辺から79.30円近辺まで円高が進行)していたのですが、11/14から増加に転じており、最新の11/15 時点では16.8 万枚まで急増しています。日本政局絡みのニュースが出たところから総取組高が増加し、実際の相場も円安ドル高が進行していることから見て、短期筋がこの局面で円売りを仕掛けていることが推測できます。となると、短期筋がいつこのポジションを解消するのか、ということが焦点となってくるでしょう。ポジションを解消するということは、円を買い戻すということで、再び円が高くなるということです。もし、短期筋主導で円安が進行していただけであるならば、こうしたファンド勢の決算期に当たる11月末が近づくにつれて円買い戻しの動きが強まる可能性が高いと考えることもできますね。ただし、こうした短期筋以外のプレーヤーが参画して相場を形成しているのだとすれば、彼らが手仕舞に動いてもそれほど大きな円高圧力は生じません。まずは今週末に出るIMM通貨先物ポジションでドル円相場における短期筋のポジションがどの程度膨らんだかを確認したいところです。
12月16日までこの「安倍トレード」が継続するという見方も広がっていますが、19日(月)、アジア中銀などは外貨準備におけるドルを粛々と円に替えていたようです。米国においては減税措置の終了と強制歳出削減が重なる「財政の崖」問題に年内決着のメドが立っておらず、ドル売りとなるリスクを回避しようとする動きが出ているものと考えられます。日本の政局だけがこの相場の材料ではないこともお忘れなく!
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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