マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
毎年年初に出される米著名ストラテジストのバイロン・ウィーン氏による「びっくり10大予想」は、マーケット関係者が風物詩としてこれを取り上げ、その年の予想を各々繰り広げたりしますが、2012年は「シェールガス、オイル生産が増え、原油価格は85ドルへ下落する」とか、「米企業の利益は上昇を続け、S&P500は1,400ドルを越える」など、なかなか見事なものでしたね。先般、ウィーン氏の古巣であるモルガン・スタンレーが「2013年のマクロ経済びっくり予想」を発表しました。「可能性は低いものの実現した場合の影響が大きい世界経済のリスクシナリオ17項目」を列挙した、ということでちょっとした話題となっています。本家のウィーン氏が2013年予想を出す前に出されたモルガン・スタンレーの2013年のリスクシナリオとはどんなものでしょうか。
気になったものをピックアップしてみました。
◆オーストラリアがリセッション(景気後退)に陥る。
オーストラリアは2012年1月時点では4%だった政策金利を4度引下げ現在は3%となっています。金利を下げて資金調達コストを下げることで需要を維持しようする金融緩和策をとっているということですから、現状においてもオーストラリア経済が好調とは言い難いのですが、先進国の金利がほぼゼロ%にまで引下げられる中にあっては3%は高金利。マーケット環境が良くなってくると投資が活発化しますが、その際に真っ先に選ばれているのがオーストラリア市場。リスク選好ムードが広がると豪ドルが買われる理由はこの高金利にあると思われますが、リセッションに陥るとなると状況は変わってきます。金利は更に引下げられる可能性があり、現在の豪ドル高の大きな修正を強いられることとなるでしょう。
◆米国は「財政の崖」に陥るが、米国人はそれを苦にしない。与野党協議は13年前半にずれ込むものの、政治家たちは金融市場に配慮して歩み寄る。
私もこのところの「財政の崖」問題に対する楽観が過ぎるのではないか、と気になっています。合意できないと大変なことになるから紆余曲折はあろうとも年末までは合意するのだろう、という楽観が蔓延し米株も堅調地合い。為替市場でもリスク選好ムードから円安ドル安が進行中。(リスクオンの時は、ドル売りと円売りが進行しますが、ドル円相場だけを見ると日本の政局絡みをテーマに円安が色濃く出ています。豪ドルやユーロドル相場などを見ると足元ではドル安が進行しており、リスク選好、楽観ムードが広がっていることが確認できます)オバマ大統領が合意に自信を見せる発言を繰り返していることから、素直に相場はそれを信じて動いているようですが、具体的に合意に向けて話が進んでいるという報道はありません。総楽観は危険な兆候。モルガン・スタンレーの予想にあるように、財政の崖問題解決が来年に持ち越されることとなれば、この楽観ムードが崩れる過程で米株や為替市場でも豪ドル売りや円買いが加速する可能性も高いのではないか、と考えています。ドル円が大底を打って上昇に転じただろう、とこのコラムでも何度か書いてきました。その考え方に変更はないのですが、一度皆が「やはりこの円安は本物ではなかったのか...」と失望させられるような大きな調整を強いられる局面が来そう。そして、そのトリガーとなるのが財政の崖の合意延期なのでは...?!ドル円の需給構造が大きく変化してきていることから、円高圧力は徐々に小さくなってきているのですが、それでも短期的に相場を大きく牽引してきた投機筋のポジションが大きく円売りに偏ってきており、彼らがこれを一斉に買い戻した際には急激に円高が進行することが懸念されています。株式市場や為替市場ではリスクに楽観なムードなのですが、ドイツ国債がマイナス金利になるまで買われており、一部資金がリスクを懸念して債券市場にシフトしていることが見てとれます。財政の崖問題、年内合意は必然ですのでそうならなかった場合のリスクシナリオも持っておいた方がよさそうですね。
※このびっくり予想は、米欧日や新興国を担当するエコノミストらが持ち寄ったものを公表したもので、モルガンはこれらの予想について「当社の基本シナリオではない」としています。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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