マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
明けましておめでとうございます。
デフレ脱却、円高是正を掲げる安倍新政権への期待がマーケットの景色をガラリと変えてしまいました。4日の大発会、日経平均は11年ぶりの上昇幅での幸先のいいスタートとなり、ドル/円相場も88円台まで円安が進行となったのですが、まだ安倍新政権が具体的に何かしたわけではありません。期待だけで動き出したこの相場が一体いつまで続くのか?!という一部の慎重論を尻目にあれよあれよと上昇していく相場を見て、センチメントというものが相場のエネルギーとしてどれほど重要なファクターであるかを改めて思い知らされましたが、ここまで水準の是正が行われると中長期的なチャートの好転に見られるトレンドの大転換は素直に受け入れなくてはなりませんね。
「トレンド大転換?!それは理解している、解っているのだけれど・・・これほど急ピッチで円安が進行したのだから、短期的には相応の調整(円高)があってもいいのではないか、ちょっと大きめの調整を期待して売ってみようか?!」そんな気持ちになるチャート形状となって来ました。88円前半の高値を頭に相場の勢いが落ちてきたように感じます。さて、ここから浅い押し目を形成しさらなる上昇となるのか、それとも短期的には売りでも充分取れる程の大きな調整が入るのでしょうか。
野田前首相が解散を口にした11月14日にはドル/円相場は79円台をウロウロしていました。それが、解散、衆院総選挙、安倍新政権発足といった流れの中、わずか1ヶ月半でドル/円相場は9円も動いたのです。昨年1年間のドル/円の年間変動幅は10円にも満たないのではないか、というくらい地味なものでしたが、政権交代だけを材料に10円近くも動いてしまったのですから驚く他ないのですが、流石に期待だけでは更なる上昇は難しく、此処から先は新政権の政策実行力が問われることとなりそうです。こうした日本の政局だけがここからのドル/円相場の柱だとするならばこの相場の継続には疑問符もつくのですが、アメリカの金融政策面からドル/円相場の上昇継続の材料が出てきたのです。
先週3日にアメリカの12月分のFOMC議事録が公表されました。議事録はFOMC開催の3週間後に公表されるものですが、FOMC直後に政策金利と具体的政策は発表されていますので、その時にマーケットが動いてしまうケースが殆どで、議事録公表でマーケットが動くことはあまりありません。しかし議事録でFRB当局(委員ら)が政策決定する際の背景やインフレ動向、米経済の見通しをどう見ているのかなどを知ることで、将来の政策を予想することが可能になる場合もあるため、今後の為替相場を占う上で非常に重要なファクターとなる場合もあるのですが、まさに前回公表された12月分のFOMC議事録が大変重要な意味を持つ内容でした。
12月のFOMCでは「失業率 が6.5%を上回り、インフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り政策金利を低水準に維持する」と具体的な数値目標を掲げ、その政策を経済指標に関連付ける方針を初めて示していました。経済指標改善という目に見える形での実体経済の回復が見られるまで緩和し続けるというのですから、これがこれまでの政策方針よりさらに長期的な緩和政策継続に繋がるとしてドル安の長期化を予測した向きも多かった印象でした。
しかしその発表の舞台裏で、複数の委員らが「2013年末より相当前に買い入れペースを緩めるか、停止することが恐らく適当と考えた」ことが議事録で明らかとなったことがマーケット関係者を驚かせたのです。昨年9月にQE3という伝家の宝刀とも呼ばれた緩和策に踏みきり、12月に失業率6.5%改善達成まで緩和を続けると言ったFRB当局が、もう今年中には緩和ペースを緩めるべきだという話し合いをしていた、ということで、思ったよりも早いペースで引き締め策が講じられる可能性が出てきました。引き締めということはドル安という思惑の終了です。つまり、FOMC議事録を見て大局の戦略をドル売りからドル買いに変更させた向きもあるかもしれないのです。(あくまで予想に過ぎませんが)実際にユーロ/ドル相場は3日の議事録公表後から崩れ始めており、ユーロ売りドル買いが顕著になってきました。
そしてドル/円相場は、アベノミクスにアメリカの早期緩和引き締めへの思惑が加わって、更なるドル買いが加速する可能性が出てきました。今後はアメリカの景気指標が良ければ早期引き締めへの思惑が広がりドル高となる相場が始まりそうです。この相場、調整を狙って売るのではなく、下がってきたら買う戦略で攻めるのが正解?!
10年に1度あるかないかの大相場となりそうです、素直にトレンドに乗って行きましょう。皆様今年もよろしくお願い申し上げます。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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