第44回 ここからユーロは買ってもいいの?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第44回 ここからユーロは買ってもいいの?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ユーロ/円が今週初め(14日月曜)に一時120円の大台に乗せました。120円台は2011年5月以来のことで、欧州債務危機によるユーロ売りが顕著となった2012年7月には100円を割り込み94.10円まで売り込まれていたのですから、この半年で25円もの上昇です。

ユーロ/ドル相場も堅調で、同じくギリシャ危機が叫ばれた7月に1.2041ドルまで値を崩していましたが現在は1.3360台。昨年はギリシャが破綻するのではないか、ギリシャがユーロから離脱するのではないかといった懸念から、ユーロは一貫して売られる通貨だったのですが、昨年の最安値から1,300ポイント以上も買い戻されました。この半年ユーロは上昇トレンドを描き続けているのです。

こうした中、米ゴールドマン・サックス・グループが11日「ユーロ買い・ドル売り」を勧める顧客向けレポートを出したとして話題となっています。ゴールドマンは、1ユーロ=1.37ドルがターゲットだとしており、1年2カ月ぶりの高値に上昇する予想をしています。
その根拠は明らかではありませんが、目先はあと300ポイント以上の上昇がある、とした強気の見方です。ユーロの危機は去ったのでしょうか。そしてユーロは積極的に買われる通貨へと変わったのでしょうか。

ギリシャ破綻が問題となっていた昨年7月にはIMMの投機筋のポジション(ヘッジファンドなどの短期勢)が22万枚までショートに偏っていました。これがドラギ総裁によるOMT(ECBによる南欧国債の買い入れ救済策)などの積極的な金融緩和策と、ユーロを救済するためには何でもするとした断固とした姿勢によりセンチメントが急転、それまで極端に売りに偏っていたユーロのポジションが買い戻されて整理される過程でユーロは上昇してきたのです。買われなくても売りが手仕舞われれば相場は上がりますね。積極的に買われて上昇してきた相場ではないのです。

そして、そのIMMのユーロのポジションは昨年12月31日発表の時点でようやく5,126枚のプラスに転じ解消されたことが確認されました。そしてこの時点でだされたゴールドマン・サックスの予想。つまり、ゴールドマンはこれまでのショートポジションの買い戻しによる自立的なユーロの上昇ではなく、ここからは積極的にユーロが買われるという予想を立てているということになります。

しかし、気がかりなのはその後に出された1月8日のIMMポジションではユーロは再び8,035枚のショートとなっていました。膨大なショートが解消され、ロングになった瞬間に再度ユーロを売ってきた短期筋がいる、ということです。ここからは、ユーロ圏に積極的な買い材料がない中は上昇が続かないだろうとしてユーロ売りの予想も増えてくるかと思います。

その兆候として懸念されるのは 昨年12月13~14日のEU首脳会議ではその半年前に宣言した経済・財政統合への行程表を詰めるはずだったのですが、結論は13年6月に先送りされています。

経済・財政統合の核となる制度改革に抵抗したのはドイツのメルケル首相でした。ドイツは今年9月に下院選挙を控えており、メルケル首相が再選を期していることから国民の反発を招くことを避けるためにEU救済路線から国内に回帰しているのではないかと指摘されています。

また、2月24、25日に控えるイタリアの議会選挙もクローズアップされることとなるでしょう。12月に辞任したモンティ首相の敷いた改革路線が継続できるのか?!前々回のコラムでモルガン・スタンレーのびっくり予想をいくつか取り上げてご紹介しましたが、その中に「イタリアで総選挙に向けて反緊縮運動が高まり、投資家はイタリアのユーロ圏離脱を心配し始める。イタリアは欧州安定メカニズム(ESM)に支援要請し、国債買い取りプログラム(OMT)の最初の支援対象国になる」というものがありました。

このところはアベノミクスが世界の注目となって円売りがテーマとなっています。円高の終焉という歴史的な転換に加えて、これまで売り込まれてきたユーロの買戻しというダブルの上昇要因からユーロ円の上昇が大きかったのですが、テクニカル的には123円どころに節目があり、上値があっても後3円程度がせいぜいではないかと思っています。あ、ゴールドマンのユーロドルの予想もあと300ポイントくらいですね。300ポイントも取れれば十分です、短期的にはまだ買っていても大丈夫ですが、この上昇が未来永劫続くとは思わないようにご注意を。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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