第48回 ビッグマック指数からみると円安は行き過ぎの水準に?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第48回 ビッグマック指数からみると円安は行き過ぎの水準に?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週8日、麻生財務相が「我々が意図しないくらいに~」といった表現でこのところの急速な円安に言及したことで、ドル/円相場が円高に振れる局面がありました。この2ヶ月あまりで15円近くも円安進行となっているドル/円相場、麻生財務大臣にとってもこのスピードは想定を超えるものだったということでしょうか。これを受けて「日本当局は90~95円くらいが満足な水準なのであり、市場もそれを徐々に理解するだろう」「日本の姿勢が変化している兆しがあるなら市場は小休止することになろう」といった見方も浮上してきています。果たして日本にとってどの水準が満足なのか、浜田宏一内閣官房参与は100円くらいがちょうどいい、と発言しているのですから100円到達は想定内かと考えてもいいと思いますが、問題はそのスピードなのでしょう。しかし本当に100円くらいがちょうどいいのでしょうか?これは海外から見ても許容できる水準なのでしょうか。

英経済誌エコノミストは8日、世界中で売られているマクドナルドのハンバーガー「ビッグマック」の値段をドルベースで比較しどの国の通貨が割安か割高かを見る「ビッグマック指数」の最新値を公表しました。これは為替の適性水準は基本的に「モノの値段」で決まるとした考えに基づいていたものです。仮にアメリカのビッグマックが1個1ドルだった時に、日本のビッグマックが1個90円だった場合、同じ物の値段ですから1ドルと90円は同じだということになりますね。これは購買力平価といって、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという考え方なのですが、実際の為替レートは購買力の他にも様々な要因によって影響されて動く為、実際の市場は購買力平価から大きく乖離して動くこともあります。しかし、中長期的に大きく乖離した状態が続くことは難しいと考えられており、価格と為替レートは長期的に調整が進み、いずれは同じ貿易財の入った買い物かごが世界中で同一価格になっていくとされています。つまり現状において物価の高い国の通貨は長期的に下落し、物価が低い国の通貨は長期的に上昇するという考え方です。

この最新のビッグマック指数によると、日本の円はドルに対し20%近くも割安だという結果となりました。中心値となる米国のビッグマックの価格が4.37ドルなのに対し、日本は3.51ドルで、19.7%も安かったのです。確かに昨年11月から2ヶ月あまりで15円近くも円安が進みましたが、これはこれまで長きに渡って円高に苦しんだ分の「水準訂正」の範囲ではないのでしょうか?!歴史的円高水準の70円台にあったドル円相場が90円台に水準訂正が行われたくらいでドルより20%も割安だというのは腑に落ちないのですが...。

実は戦後の円の最高値をつけた2011年の1ドル=75.35円、この時は1%の割安にまで米国との格差が縮小していました。つまりビッグマック指数から換算すると70円台の水準が円相場の適正水準である、ということになります。輸出企業が赤字に苦しんだ70円台が適正水準だというビッグマック指数が正しいとは思えませんが、ただ、これまでも購買力平価を材料に日本には円高圧力がかけられてきた経緯があるため無視はできないのです...。
今週15~16日にモスクワでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。日本の当局者は、日本の新たな金融・財政政策と円安について議論がある可能性はあるものの、競争的な通貨切り下げを行っているとして日本への風当たりが強まる状況には至らないだろうとしています。しかし、ドイツやロシアの中央銀行からは通貨切り下げ競争が起きる危険性があるとして苦言を呈されており、もしG20で円安について批判が集中するようなことがあれば、ドル/円相場も一時的には大きく動く可能性があることに留意しておきたいところです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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