マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
いつスピード調整があってもおかしくないという恐怖と、先週はG7~G20という国際的イベントを通過するにあたっての警戒からドル/円相場は高値波乱の様相となりました。上値も94円台から上が重くなっているのですが、下値も固く92円を割り込むことなく要人発言が出る度に神経質に動いています。
海外の要人が日本の政策に苦言を呈する度にふるい落としのような円高進行となりますが、これは、利食いのきっかけになったという程度のもので、積極的に円買いが起こっているというのとは違います。実際にG20でも日本がやり玉に挙げられて非難されたわけではありません。日本が非難されるならスイス中銀が行なっている介入を問題にしない訳にはいかないですし、欧米の金融政策、そして中韓の為替操作も大変な問題なはずですよね。各国から苦言を呈されているのは、その円安進行のスピードによる影響が懸念されることに加え、あまりに日本の要人が為替レートに言及し通貨安誘導を積極的に行なっている様に見えることが問題なのでしょう。
G20では「通貨安競争」の回避を改めて求める共同声明を採択して閉幕。名指しでの日本への非難が回避されましたので、ここからは海外からの雑音に振り回されることなく、アベノミクス相場に乗る=押し目は買う、ことが正解だと思いますが、この水準では買ってもなかなか上がらなくなってきているのも事実。流石に11月中旬から2月中旬までの2ヶ月間に一気に15円も駆け上がった相場と同じスピードでの円安進行とはならないのかもしれません。同じピッチで此処から先2ヶ月で15円もの円安が進行するとなればゴールデンウィーク前にはドル/円相場は110円に到達してしまいます。そういう可能性が無いとは言いませんが、打ち上げ花火のように儚く散らないためにも、適度な調整を入れて腰の入った相場にしていくことが大事になってくるでしょう。先般「我々が意図しないくらいに~」と発言した麻生財務相の発言もひょっとしたら適度なガス抜きを狙ったものかもしれません。
ではここからのドル/円相場、基本の戦略は買いだとしてもどのような点に注意して安値を拾って行けばいいのでしょうか。次の相場の焦点は月内にも決定される次期日銀総裁人事を巡って、有力とされる候補の名前が出てくる度に乱高下する可能性が大きいかと思いますが、安倍首相は参院選、そして増税実現に向けて何が何でもアベノミクスをやり遂げる決意であろうことから、事前にどんなリーク合戦があっても超リフレ派が指名されることでしょう。先週名前が上がった武藤氏のように追加金融緩和に積極的ではないとみられる候補の名前が出てドル円相場が急落することがあったら、その安値は拾っていいものと思っています。チャートから見て92円を割り込んだら様子見、深押しの可能性を考慮、94円台を固めて上昇してきたら高値でも飛び乗る覚悟でロングで攻めるスタンスを貫きたいと考えています。
また、今回のアベノミクス相場は尋常ではない大相場であるため通常用いられる「アノマリー」があまり有効ではないとは思いますが、仮にここからは多少円安の進行速度が落ちると想定して、季節要因的にどのようなことが考えられるかを抑えておきたいと思います。
一般的にドル/円は1月に年間の高値安値を付けやすいとされますが、すでに2月にドル円の高値を更新してしまっていますので、逆に1月のスタートの安値86.53円が2013年の年間安値だった、と考えていいでしょう。そして1月の方向性が年間の方向性を決めやすいと言われていますので、方向は勿論円安ドル高。そして2月のアノマリーは、初旬がドル高の場合は途中でドル安に転換しやすいとされています。
つまり、2月は方向転換が起こりやすく円高進行に注意ということ。背景としては2月はアメリカ国債の償還・利払いの金額が通常月より大きいため、ドルで受け取った満期資金や利息などを円に戻すフローが出ることなどが挙げられるのですが、償還日の15日は先週通過してしまいました。昨今は償還資金がアメリカ国債に再投資される事が多く、また金利が低いため、利息の受け取り額も昔ほど多くない事からあまり影響はないとされていますが、今年もそのような結果に終わったようです。
また、3月の決算期末に向けて、本邦企業が海外で稼いだドルを円に戻す資金還流が起こりやすいとされており、これから3月に向けてはこちらが意識される可能性が。リパトリエーションとも呼びます。季節要因アノマリーからは円高圧力が強まる時期に入ってきますが、やはり94円を超えて上昇する相場となれば、黙って買って乗る大相場だということも忘れないでおいて下さいね。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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