マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先週金曜のアメリカの3月雇用統計はNFP(非農業部門雇用者数)が予想の15~16万人を大幅に上回り23.6万人増、失業率も前回の7.9%から7.7%へと改善、どちらの指標もポジティブサプライズとなり、ドル/円相場は一気に1ドル96円台の大台に乗せる円安進行となりました。昨年2012年11月の衆議院解散以降のアベノミクス相場でこの4か月でドル/円相場は16円あまりも上昇したことになります。面白いのが11月というのはちょうど米国が冬時間入りしたタイミング。そして3月の雇用統計発表で96円台を達成した先週金曜日が冬時間最後の取引でした。
アメリカには夏時間があります。(サマータイムあるいはデイライト・セイビングとも呼ばれる)夏時間の実施期間は3月の第2日曜日午前2時から11月の第1日曜日午前2時までとなっており、実質取引営業日としては昨日11日月曜からの取引がこの夏時間スタートとなります。逆に、丁度野田元首相の衆院解散宣言があった11月第3週の前の週から先週までが冬時間で、この期間にドル円が16円もの上昇、ダウ平均も史上最高値更新、日経平均も8,000円台から12,000円台へと大きく上昇したのです。このこと自体にはあまり意味はありませんが、ほとんど押し目を作らずに一方的なトレンドを継続した大相場の期間帯が最も寒さの厳しい冬の時間帯だったというのはなかなか興味深いではありませんか。
しかし、市場には、日照時間が投資家の心理に与える影響から、冬至を過ぎたころから種まきをはじめ(買い始め)、夏至を過ぎたころから収穫行動に出る(売る)、という投資行動ファイナンス研究も存在します。要するに人々は徐々に日照時間が長くなっていく冬至(12月21日頃)から夏至(6月21日頃)にかけてリスクを好み、反対に夜が長くなっていく夏至から冬至にかけてはリスクを嫌う、ということですが、ウォール街には「Sell in May and go away」(株は5月に売れ)という相場格言があり、これはまさにこのサイクルに合致したもので、寒いから投資が鈍る、ということではなく、逆に徐々に日照時間が伸びていくことへの本能的な行動として種まきを始めるのだ、と考えれば不思議はないのかもしれませんね。
夏至の6月まではまだまだ日柄があります。これからいよいよ本能ではなく実際に日照時間が伸びていくことを実感できる「春」が訪れることを考えれば、まだまだこの先この強気相場は継続すると考えてもいいのではないでしょうか。相場は「気」が創る。だってまだ補正予算をつけたくらいなもので、アベノミクス、実質的には何も始まってはいないのですから。
昨日から夏時間になったことでの注意点。雇用統計などアメリカから出てくる指標の発表時間が変わります。冬時間中は22:30発表で各所で開催されている雇用統計イベント・セミナーも発表時間の22:30を絡めたものとなっていましたが、夏時間では雇用統計の発表時間は21:30と1時間前倒しになります。雇用統計だけでなく、すべての米国の指標発表が1時間前倒しとなりますから、冬時間のつもりでのんびりしていたら相場が動いてしまって後の祭りに...なんてことにならないようにご注意くださいね。
日本でも歴史を紐解けば何度かサマータイムが導入されたこともありますが、1952年以降は廃止されています。近年、エコや景気浮揚の観点からサマータイム制導入が検討されたりもしていますが結局実現していません。サマータイム制は明るいうちに仕事をし、夜の余暇時間を延長できるとしたメリットが謳われていますが、おそらく日本では、結局1時間早出しても帰る時間は変わらないのではないか、サービス残業の温床になりかねないのではないか、という指摘があるようで、日本人には向かないとされているようですね。私も早起きが得意ではないので日本でもサマータイム制が導入されたら大変。それでなくても為替相場と対峙していたら昼も夜も関係ないのですものね。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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