第1回 心機一転!電子書籍を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第1回 心機一転!電子書籍を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

この4月より、このコラムは「市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質」と衣替えをすることとなりました。株式市場では「テーマ」という切り口がなされることがよくあります。一つのテーマから連想される銘柄が注目対象になり、証券会社からはテーマの対象銘柄一覧表(レポート)が発表されたりもします。ですが、多くの投資家にとってその流れに乗ることはそう簡単ではありません。そもそも一覧表をタイムリーに入手することがままならないうえ、一覧表には時として「こじつけ」のような銘柄も含まれていることが多々あるためです。また、既に動意づいてしまった関連銘柄にそのまま乗ってしまっていいものかどうかも判断しかねるのも現実的な問題になると思えます。

そこで、このコラムでは旬の、あるいはかつて話題となったテーマを軸とし、それらにもうひと捻り考察を加え、株式市場への影響を考えてみたいと思います。テーマの一歩先を考えるのであれば、テーマ関連銘柄の一覧表入手に血眼になる必要性はかなり低減できます。展開を先回りすることで、心理的にも経済的にも余裕を持って市場に対峙することもできるでしょう。連想される関連銘柄の一覧といったアプローチは証券会社に任せ、本コラムが読者のみなさまにはそのさらに一歩先を考えていただくための一助になれば幸いです。読者のみなさまの中で、今後本コラムで取り上げてもらいたいテーマなどがありましたら、遠慮なく事務局までご提案ください。随時取り上げてみたいと考えています。

さて、その初回となる今回は、「電子書籍」を取り上げてみましょう。このテーマはタブレット端末がスタートした2010年頃から断続的に注目され、昨年は電子書籍端末がアマゾンや楽天などから相次いで市場に投入されたことで本格普及の期待が膨らんでいます。既に電子書籍を活用しておられる方も少なくないでしょう。ただ、相場のテーマとしては、当初の期待に比べ、物色される毎に徐々に盛り上がりに欠くようになってきたようです。

テーマを考えるうえで重要なのは、「それによってモノの流れがどう変わるのか」と「誰がそれを喜ぶのか」です。それを見極めれば、「誰が得をするか」が予想でき、株式市場への影響も期待ができることになります。では、電子書籍によって、モノはどう流れが変わり、誰が喜ぶのでしょうか。まず、電子端末が流通します。当然、その販売会社や製造会社にメリットが生じることになるはずです。ただし、これらに関連する銘柄群は、テーマ関連銘柄一覧表でこれまで散々に取り上げられていますので、ここで改めて議論はしないでおきましょう。端末以外では、紙の店頭書籍の流れも変わります。これらが完全に駆逐されるとは思いませんが、紙、印刷、搬送、小売といった業界にとっては逆風となる可能性が否めません。これは、既に配信が中心となった音楽業界のCDの苦境を例にしてもらえばいいでしょう。これらの業界では電子書籍化に適応して将来的にビジネスモデルを変化させる企業も出てきてもおかしくないと考えます。

では、喜ぶのは誰でしょう。これは消費者であるはずです。ただし、これまでのところ、消費者が雪崩をうって電子書籍に殺到している様子にはありません。これは電子書籍のコンテンツがまだ潤沢ではないうえ、店頭書籍と比べて価格メリットが大きくない、端末間で使用互換性がない、などがネックになっているためです。このことは消費者が現在の電子書籍はまだ「高い」と感じていることに他ならず、このテーマが本格的なものになるためには、消費者にとってもっと使い勝手がよくなるか、価格が大きく低下するか、が必要だということです。しかし、著者の明らかな作品には一定の著作権料負担が不可避であり、価格の引き下げ余地は決して大きくありません。そう考えれば、電子書籍の対象は読み捨てが主体の雑誌などに当面ならざるを得ないのが現実なのです(もしくは著作権料の消滅した古典など)。これが電子書籍というテーマが本格的な相場に至っていない最大の原因と言えるでしょう。このことは、使い勝手の劇的な改善、あるいは著作権料などの大幅な改定などがあれば、電子書籍が相場のテーマとして一気に本格化する可能性があるいうこともあります。そういったニュースが流れ始めてきた時は要注目でしょう。

コラム執筆: 長谷部 翔太郎

証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investor 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数。 過去に「業種別アプローチで極める、銘柄選び」を執筆。

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