第8回 止まらぬ住宅価格の上昇【北京駐在員事務所から】

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第8回 止まらぬ住宅価格の上昇【北京駐在員事務所から】

1日(月)に、中国指数研究院(主に不動産に関するデータを研究、公開する調査機関)が、3月の中国主要100都市の住宅価格を公表し、平均単価は10ヶ月連続の上昇となりました。

1平方メートル当たりの単価は9,998元(約15万円)で、前月比で1.06%上昇しました。
前年同月比では3.9%の上昇となっています。
3月は、84都市で価格が前月よりも上昇し、2月の74都市から増加しました。
北京、上海などの主要都市では、昨年秋まで下落傾向にあったのですが、11月から上昇に転じ、直近では全体平均を上回る上昇率となっています。

住宅価格の上昇で国民の不満が高まっていることを受け、国務院(日本の内閣官房に相当)は、2月に市場の鎮静化を目指す旨の声明を発表しました。
これを受け、各主要都市では、当局が下記のような対策を決定し、一部は既に実施されています。

(北京市)
・単身者が2件目の住宅を取得することを禁止(従前は2件まで可)
・住宅を2件以上所有する者が、取得後5年以内に物件を売却する場合には、売却益に20%を課税
・2件目の住宅取得につき、必要となる頭金の割合を引き上げ

(上海市)
・売却益に20%を課税(北京市と同様)
・2件目の取得につき、頭金の割合を引き上げ(同)
・2件目の取得となる場合には住宅ローンの金利を引き上げ
・金融機関に対し、3件目以降の取得となる場合には住宅ローンの供与を禁止
(広州市)
・住宅購入希望者について、税金や社会保険料の納付状況を確認(問題があれば購入を認めず。)

(深圳市)
・住宅価格の上昇率を、市が設定した目標値以内に抑制

他の都市でも、各地の実情に応じ、引締め策を決定し公表しています。
しかしながら、中国の住宅需要は、一次取得者が多くを担っており、上記の対策がどの程度効果を示すことが出来るかについては、懐疑的な声が多く聞かれています。

先日、中国人男性と結婚し、北京で暮らしている日本人女性に話を伺ったのですが、価格上昇の波に乗り遅れ、やむなく郊外で住宅を購入したそうです。
それでも、もし今購入するとしたら、さらに遠方にならざるを得なかったと話していました。
このような状況から、市民は先を争うように購入に動いており、新規物件の販売があると取得希望者が殺到するそうです。

中国都市部の現状は、日本の高度成長期からバブル経済期にかけての状況とそっくりです。
日本では、「今を逃すともう買えなくなる」との焦りから、住宅購入に拍車がかかり、さらに価格が上昇するスパイラルとなったのですが、バブル崩壊で様相は一変しました。
中国政府が、一次取得者の需要にこたえつつ、投資あるいは投機を抑制し、住宅価格を安定させることが出来るか、非常に難しい舵取りを迫られています。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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