マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
4月3~4日の黒田新日銀総裁下での日銀の金融政策決定会合、期待外れに終わるのではないか、という警戒から、会合直前にはドル円相場は1ドル92円台にまで下落していました。97円台が重くなってきており、日銀が市場の期待を超える緩和策を打ち出さないと、ここを超えられないだろうという見方が広がっていたのです。
ところが週明け8日月曜にはドル円相場は99円台へと上昇。わずか3日で6円もの円安ドル高が進行しました。週末の米国の雇用統計の数字が予想を超える悪化だったにもかかわらずドルが売られることなく、円が売られ続けているのは、前日に発表された日銀の金融政策のレジームチェンジのインパクトがあまりに大きく、雇用統計の悪化がノーイベント化してしまったということなのでしょう。
異次元緩和策と呼ばれる今回の日銀の金融政策の詳細は報道に詳しいので詳細説明は割愛しますが、至極簡単に何が重要なのかをまとめると、今後2年間でバランスシート2倍、マネタリーベース2倍、長期国債と上場投資信託(ETF)の保有額を現在の2倍に拡大するという「日銀バズーカ砲」が放たれたということ。資金供給量は2年で130兆円にも上ることとなりますが、なんとこれは日本のGDPの5割強にあたる金額なんですよ。否が応でも円の価値が下がることになりますし、加えてETFを2年間で2倍にするというペースで積極的に買うことから株が上昇することも必至です。これまでも1%ルールなどと呼ばれ、東証株価指数(TOPIX)の前場終値が前日比1%超下がると、日銀がその日の後場にTOPIX連動型ETF等を大量に購入することで日本市場の株価を下支えしてきた、という経緯がありましたが、今後はさらに効果的な買い入れ戦略をとるとのことで、TOPIXを下げさせないという明確な意思が示されました。さらに日本国債を償還期間が5年超の国債を含め今月は6.2兆円、5月から毎月7.5兆円程度買い続けることも発表しています。これは毎月の国債発行額の何と7割強にもあたります。すでに国債市場には動揺が広がっており国債金利が急低下。緩和策発表翌日の5日、日本国債10年物金利は0.3%台、30年物の金利も0.9%台へと低下しました。考えてみてください、30年も運用して1%未満の金利しか得られないなんて...!!この計算でいくと日銀は長期国債を年50兆円ずつ積みますこととなるのですが、これは政府が1年間に発行する42兆円をも上回る規模です。つまり日銀は日本の金融機関、機関投資家に「国債は日銀が買う、だから国債以外の投資先に投資しなさい」と言っているのに等しいのです。これまでの日本株は買っても買っても上がらず長期低迷してきたため金融機関は、決して高くはない金利でも確実に運用利回りが確保できる安全資産である国債を保有してきたのですが、もう国債は安定運用ができる投資先ではなくなりました。円キャッシュを保有していれば円安で目減りする、国債を保有していても儲からない、、、ならばあなたならどうしますか?!
日本の機関投資家が動き出すのはゴールデンウィーク明けと言われています。新年度の投資計画概要は4月中旬からゴールデンウィーク前にかけて公表され、ゴールデンウィーク明け以降投資アクションを起こすのが通例となっていますが、今後機関投資家は日本株への投資比率を引き上げるでしょうし、円安へのヘッジで外債、外貨投資も拡大するだろうと思われます。国債金利が低下するため住宅ローン金利の低下も必至です。すでに不動産関連が動き出していますが、ローンを組んで住宅を購入する人が増えれば住宅価格は上がります。円安となれば輸入物価は上昇します。どうやら2年で2%のインフレ目標、黒田さんは本気でやる気のようです。発表前は懐疑的な見方も多く、そのため株も為替も手仕舞い売りが優勢でしたが、景色はすっかり変わってしまいました。
ということで相場ですから上下乱高下局面もあるでしょうけれど、ドル円100円というのは通過点に過ぎず、2007年に120円を超える円安であったことを考えれば120円レベルの円安水準は何ら不思議はないターゲットになるかと思っています。100円下で揉みあう展開となるなら、安値は拾って長期保有という戦略もまだまだ間に合うでしょう。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
TwitterAccount
@hirokoFR
マネックスからのご留意事項
「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。