第9回 新茶の季節【北京駐在員事務所から】

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第9回 新茶の季節【北京駐在員事務所から】

春の訪れを告げるように、街のあちこちで「新茶入荷」の広告が見られるようになりました。
中国の主な茶生産地は、長江(揚子江)流域以南の中部、南部です。日本よりも温暖な地域が多く、早いところでは二月から新茶の収穫が始まります。

日本で、「中国茶」といいますと、ペットボトルでも販売される烏龍茶(ウーロン茶)やジャスミン茶が有名ですが、中国茶の種類は非常に多く、中でも生産量が多いのは日本茶と同様の緑茶(収穫後の茶葉を発酵処理しないもの)です。

緑茶の代表的な品種が、上海市に隣接する浙江省の杭州市で生産される龍井茶(ロンジン茶)です。中国の祝日「清明節」(毎年4月5日頃)以前に収穫されるものは「明前茶」と呼ばれ、特に高級品とされています。日本の「一番茶」と同じです。

先日訪問した老舗の茶店では、最も高価な龍井茶が100g1,760元(約26,000円)で販売されていました。日本茶の最高級品(玉露)が、100gで10,000円くらいのようですから、大変高価なものであることがお分かりいただけると思います。それでも、昨年共産党が打ち出した「公費による酒席や贈答の制限」により、龍井茶の価格(卸値)は昨年の半値になっているそうです。
高級中国酒の茅台酒や、フカヒレ、アワビ等の価格急落と同じ図式です。
これも中国らしいと言えばそれまでですが、「龍井茶」として流通する茶葉の量は、本来の産地(杭州市及びその周辺)での生産量を遥かに上回っており、産地ではブランドの維持に腐心しているものの、効果があがっていません。また、高級茶の収穫時期は清明節前の二週間程度に限られており、かつ、根気を要する手作業となることから、産地では労働力の確保が問題となっているそうです。内陸部での募集により、何とか人員を確保しているものの、賃金が高騰しており、また収穫後の加工作業とあわせ、技術の伝承が困難になっているそうで、日本の伝統的な農産物や工芸品と同様の状況が起きています。

さらに、長い伝統を有する中国の「茶文化」にも、「コーヒー」という強力なライバルが出現しています。北京では、至るところにスターバックス、マックカフェあるいは香港資本のコーヒーチェーンの店舗があり、若者を中心にコーヒーが急速に普及しつつあります。飲茶あるいは早茶といわれる、中国茶と点心(お茶請け)を嗜む風習も、今では年配者限定のものになっているようです。

日本では、ペットボトル飲料の普及をきっかけに、また健康維持への意識の高まりから、緑茶の人気が復活し、スイーツ等関連商品も売上を伸ばしているそうですが、中国茶は今後衰退していくのでしょうか?
油を多用する中華料理にお茶は欠かせないものですが、どうも先行きの見通しは明るいとは言えないようです。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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