第2回 メガネの需要を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第2回 メガネの需要を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場が活況を取り戻す中、今月よりコラムを「市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質」と一新いたしました。株式市場でよく取り沙汰される「テーマ」について、その一歩先、あるいはもう一捻りを加えた視点での解説を行おうという企画です。本コラムが読者のみなさまの投資の一助になれば幸いです。読者のみなさまの中で、今後本コラムで取り上げてもらいたいテーマなどがありましたら、遠慮なく事務局までご提案ください。随時取り上げてみたいと考えています。

さて、その2回目となる今回は、「メガネ」を取り上げてみましょう。今年の春は例年以上に(毎年こういった形容をされていますが(苦笑))花粉が飛んだようです。まだ花粉のシーズンは終わっていませんが、この時期はマスクが手放せない方も多いのではないでしょうか。そういった折り、花粉防止向けのメガネの需要は急激に増加しているようです。少し前からはPCなどが発するブルーライトを削減するPCメガネも人気を博していることをご存じの方も多いでしょう。これらを材料にメガネメーカー(販売点)の株価は大きく動きました。花粉症に悩む方が増える中、また、PCを眺めて目が疲れると感じる人口が着実に増加する中、これらの人気は一過性ではなくホンモノだという認識が市場に広がったためだと考えられます。

前回、テーマを考えるうえで重要なのは、「それによってモノの流れがどう変わるのか」と「誰がそれを喜ぶのか」だと指摘しました。今回のケースではなんといっても、花粉症や目が疲れると考える方々の大きな支持があった、つまり非常に喜ばれた、という点が重要でしょう。目薬や抗アレルギー薬などの処方箋は以前からあったものの、それらは利用者を決して満足させるものではなく、一時凌ぎの域を越えていないという評価が一般的であったと言えます。今回、話題となったメガネは医薬品的なアプローチではなく、「物理的に」花粉やブルーライトを防ぐというもので、云わば「力づく」で原因を排除しようというものです。発想はシンプルですが、その分わかりやすく、継続的な効果も期待できます。これは一種の「コロンブスの卵」のような商品であったと言えるでしょう。より興味深いのは「モノの流れの変化」です。これまで、メガネは視力矯正がその最大の目的でした。しかし、これらの新メガネは「症状緩和」という健康保全がその目的に設定されています。従来の発想を越えた「メガネ」の出現とも言え、これが視力矯正の必要なかった層をもメガネ市場の顧客とすることに繋がっているのです。こういった変化を株式市場が評価したのは当然のこととも言えるでしょう。折しも、PM2.5といった微粒物質の飛散懸念も高まってきています。健康保全のためのメガネの需要はまだ根強いものがあるのかもしれません。

さらに、もう少し踏み込んで考えてみましょう。そもそも危険防止のための伊達メガネは以前からありました。健康保全を謳うとはいえ、それがこんなに一般化した背景には、メガネがかなり軽量となり、またファッション性にも優れた製品が輩出され、かつメガネの値段が大きく低下した、という事実があります。そのため、2000年以降は視力矯正目的においても、生活シーンによってメガネを着替えるという「おしゃれ」が一般的となっていました。こういった下地があったからこそ、これまでとは発想の異なった「健康保全」のためのメガネがブレイクすることができたのだとも言えるでしょう。もちろん例外もありますが、相場の柱になるようなテーマは全くのゼロから生まれるものではなく、ある程度下地があるところから生まれるケースが圧倒的です。明日のテーマは、今すでにその下地が形成されているはずです。そう考えれば、わずかなトレンド変化も興味深く見ておくことが如何に大切かを痛感させられます。


コラム執筆: 長谷部 翔太郎

証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investor 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数。 過去に「業種別アプローチで極める、銘柄選び」を執筆。

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