第11回 四川省地震の経済への影響は限定的か?【北京駐在員事務所から】

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第11回 四川省地震の経済への影響は限定的か?【北京駐在員事務所から】

20日(土)に四川省で発生した地震については、日本でも大きく伝えられていますが、震源に近い地域では多くの死者、行方不明者が発生し、救出活動が続いている状況です。

今回の地震の被害状況判明は今後の調査に委ねられることになりますが、2008年の四川大地震との比較では、今回の被害は軽微で、中国経済の成長の足を引っ張るものにはならないと見られています。

地震後の上海、深圳両株式市場は下落基調となっていますが、市場関係者は地震以外の要因によるものが大きいとしています。

2008年5月の四川大地震はマグニチュード8(今回は7)で、また震源も今回の地震よりも省都成都市(総人口1,400万人)に近かったため、死者約69,000名、現時点でも行方不明者約18,000名という重大な被害となりました。
被害総額は8,500億人民元(約13.6兆円)を超えたと推定されています。これに対し、今回の地震による経済的損害は、初期段階の推定ですが100~200億元(約1,600~3,200億円)と試算されています。

2008年の地震後には、政府が4兆元(約64兆円)の復興ならびに経済活性化のための予算を投入しました。
これが震災からの復興とその後の経済成長に寄与したのですが、結果的に住宅価格の高騰をもたらしたとの批判もされています。

エコノミストは、今回の被害規模は2008年の大地震よりも小さく、また中国の経済規模や、国及び地方政府の歳入額も2008年時点より大きくなっているため、今回の地震が経済全体に与える影響は軽微で、政府の成長率目標(7.5%)達成に障害となるものではないと分析しています。
短期的には、四川省での不動産開発の停滞や物件価格の下落が予想されるものの、大規模な対策は不要と指摘しています。

今回の地震もさることながら、感染者が増え続けている新型鳥インフルエンザや、相次いて報道される環境汚染の問題等、中国経済には不透明要因が山積の状況です。
天災は避ける術がありませんが、中国に滞在する者としては、日常生活でできる限りの注意を払いつつ、政府の政策遂行(舵取り)に注目したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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