第13回 公費支出削減令で高級レストランの経営に逆風【北京駐在員事務所から】

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第13回 公費支出削減令で高級レストランの経営に逆風【北京駐在員事務所から】

昨年11月の共産党大会で、習近平氏が総書記に就任し、公費支出(接待費や出張費等)の削減を呼び掛けています。これを受け、党や政府の幹部らによる豪華な宴会が激減し、高級ホテルやレストランが苦境に陥っているそうです。新聞記事は、業界関係者の「凍える春」との嘆きを伝えています。

飲食業界の売上高は、これまで「前年比2ケタ成長」が常識だったそうですが、本年1~2月(旧正月の書入れ時です。)は前年同期比8.4%増で、10年ぶりの1ケタ成長にとどまりました。

公費需要は今後も期待できないとの見方から、いくつかのレストランは、個人客の獲得に動き、売上の確保を図っています。
具体的な販売促進の事例として、新聞記事には以下の内容が紹介されていました。

(1) 家族向けセットメニューの導入

広東料理の全国チェーンが、一人前150元~300元(約2,400円~4,800円)のセットメニューを提供し、「個室利用料込」で人気を得ています。このメニュー、以前の価格からかなりの値引きで提供されているそうです。

(2) サービス料等の廃止

別の全国チェーンでは、個室利用時の最低消費額(中国では、レストランで個室を利用する場合に、部屋の大きさにより「○○元以上料理を注文する」よう求められるのが一般的です。)、サービス料やコルケージ(客が自分で酒を持ち込んだ場合に払う持込料)を廃止し、顧客の繋ぎ止めを図っているそうです。

(3) メニューの値下げやキャンペーンの実施

人気メニューの値下げや、期間限定の割引を行い、顧客獲得を図る動きも強まっています。
また、少人数でも多くの料理を楽しめるよう、量を減らして安価での提供を始める店も増えているそうです。

客単価が数百元程度の店であれば、上記のような販促策でテコ入れの余地がありますが、公費接待等に依存していた超高級店は深刻で、店舗の賃料や人件費のアップ、さらには食材の価格上昇とあわせ、逆風は強烈だそうです。以前は、「宴会の一人当たり単価10,000元(約16万円)、うち7,000元(約10万円)がお酒」のような話が至る所であったそうですから、これまでが異常であったとも言えます。業界関係者は「今の動きは業界の正常化への一歩」と述べています。

北京に、京都の老舗料亭「美濃吉」の支店があるのですが、夜の懐石コースは一人前3,000元(約5万円)から8,000元(約13万円)です。客はほとんど中国人で、日本人の姿は稀だそうです。
また、当事務所の近くに、高級ブランド店が入るショッピングセンターがあるのですが、そちらの酒売り場には「貴州茅台酒80年もの500ml瓶」が38万元(約600万円)で売られています。高級車が買える値段です。このような超高額商品があることから、「超富裕層のポケットマネー」や「役所や会社の金」が使われる市場が一定規模存在することが分かります。ちょっと気の遠くなる話です。
公費による豪華な宴会や高額の贈答品、さらには汚職のニュースは、日常的に報じられており、庶民の不満も高まっています。共産党や政府も、これまでの状況を放置できないとの判断から、節約令を出し、引締めに努めているのですが、長年染みついた悪習の修正は容易でないように思われます。

高級ブランド品等贈答品市場の動向とあわせ、いろいろな意味で今後も注目が必要です。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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