第14回 オフィスビル賃貸市場の先行きは不透明?【北京駐在員事務所から】

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第14回 オフィスビル賃貸市場の先行きは不透明?【北京駐在員事務所から】

中国の大都市では、住宅価格の高騰が止まらず、市場鎮静化のための政府の様々な対策も効果を挙げていません。このため、若年層を中心に不満が高まっています。

オフィスビルの賃貸市場も、住宅価格ほどではないものの、中国の経済発展に伴い、国内企業、外国企業ともに需要旺盛で、ここ数年堅調(賃料の上昇傾向)が続いていました。
しかしながら、ここに来て、賃料負担の重さに音をあげたテナントが、より安価な物件に移転する等、風向きに変化が生じています。

米国の不動産総合サービス会社ジョーンズ ラング ラサール(JLL)が行った調査によると、北京のAクラスのオフィスの賃料は、本年1~3月に、昨年10~12月から2%下落しました。
四半期ベースでの賃料下落は、2009年7~9月以来、3年半ぶりとなります。特に、賃料の高い市中心部での下落幅が大きく、JLLは、テナントが高い賃料負担に耐えきれず他の地域に移転する等により、需要が縮小していると分析しています。

また、英国の不動産総合サービス会社サヴィルスによると、北京市のオフィスの空室率は、本年末まで3%前後と、最近15年間の最低水準で推移すると見られるものの、賃料は年末までに2~3%下落すると予想しています。
JLLと同様、テナントがより賃料の安い物件に移転したり、賃借面積を減少させたりする動きが今後強まると見ています。
サヴィルスの調査では、北京と同様、上海でも賃料水準は横ばいで、特に市中心部では僅かながら下落に転じているそうです。需要の縮小が賃料の上昇を抑えています。

中国地場の開発業者は、北京や上海のオフィス需要は今後も底堅く、賃料の大崩れはないと見ています。一方、重慶、西安など内需への依存度が高い都市では、中国経済の減速により、今後賃料の値崩れや空室率の急上昇が発生する可能性があると警戒しています。

さらに、市場の今後を左右する不透明要因として、新規物件の供給増が挙げられます。
米国の不動産総合サービス会社CBREの調査によると、今後、2016年までの4年間で、中国の主要14都市のオフィス賃貸可能面積は80%増となるそうです。
CBREは、この新規供給の結果、特に天津、瀋陽、重慶などの都市で、大幅な供給過剰が発生する恐れがあるとしています。
中長期的には、まだまだ成長余地の見込まれる中国経済ですので、いずれは落ち着くのでしょうが、今後数年程度に限れば、雲行きはかなり怪しいと言えます。

北京の中心部でも、ところどころで大型ビルの建設が続いており、またビジネス街での人の動きは活発で、大国中国の力を感じます。
一方で、南部沿岸地域では、賃料上昇で製造業の逃避が見られるなど、経済、景気の状況はまだら模様のようです。
住宅価格の動向とともに、オフィス賃貸市場についても注意してみたく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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