第3回 ネット通販の需要を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第3回 ネット通販の需要を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場は引き続き活況を維持しています。やや勢いには一服感が出てきましたが、「休むも相場」です。日銀の金融政策や政治の安定性などを考えると、相場の方向性にまだ大きな変化はないように思えます。今月は企業の決算発表が集中しました。現在、アナリストやファンドマネージャーは説明会などに足を運んでいる最中です。こういった中から、次の相場の柱が浮き彫りになってくるものと考えています。

さて、4月より「テーマを読み解く」と衣替えした本コラムですが、3回目となる今回は、「ネット通販」を取り上げてみましょう。少し前ですが、米国のアマゾン・ドット・コムが日本におけるネット通販会社として最大になったとの報道がありました。以来、いつか取り上げてみたかったテーマでしたので、もう少しこの流れを掘り下げてみたいと思います。今やネット通販の市場規模は6兆円とも10兆円とも言われています。全国百貨店売上が年6兆円ですので、ほぼそれに匹敵するか、既にそれを上回る市場規模にまで成長していることがわかります。確かに、ネットでは商品比較や値段の比較が容易にでき、また24時間対応でもあり、さらには居ながらにして商品を受け取ることもできる、と消費者にとっての利便性は非常に高いと言えます。この利便性を追い風に市場は急成長してきました。実際、筆者の周りでもネット通販は極めて普通に使われています。最早、ネット通販を全く使ったことのない方はかなりの少数派になっているのではないでしょうか。

しかし、それほどの利便性にもかかわらず、買い物は全てネットで済ませるというヘビーユーザーは決して多数派ではありません。これは何故でしょうか。やはり潜在的に「実際に商品を手に取ってみたい」という欲求は否めないでしょう。年輩の方は、ネットや通販というシステムに信頼を置けないと考える方も少なくないと思います。以前にあった「(ネット表示と実態が異なる)おせち事件」やクレジットカード情報の漏洩リスクなどはその典型です。そして、女性は特にそうかもしれませんが、やはり外に出てウインドウショッピングをすることは根本的に楽しいものであり、この魅力には如何に利便性で優れていても決して太刀打ちができません。換言すれば、ここにネット通販の拡大余地があり、あるいは百貨店など店舗販売から見たネットへの対抗策のヒントがあると言えるのです。直近でも東京や大阪ではさまざまな大規模商業スペース(ビル)がオープンしましたが、ネット通販が急成長する中でも、店舗販売で十分対抗できるという好例だと考えます。

逆に、ネット通販がさらに市場を拡大させていくには、前述のようなリスクの抑制が不可欠です。このことは、決済機能の厳密化、宅配流通の安全強化、ステルスマーケティングを排除した第三者による評価設定、製品保証の充実、などに依然として改善余地があることに他なりません。ネット通販市場の拡大は、通販企業のみならず、こういった周辺産業にも影響を及ぼすことになるでしょう。そして当然、より一層の品揃えの拡充も求められます。ネットの強みを活かし、店舗販売ができなかった小規模店や地方の名店などを掘り起こす流れも加速してくるはずです。その場合、通販企業よりもその店舗に大きなメリットが生じる可能性は大きいと思われます。ネット通販という大きなトレンドが生じていますが、それに併走して発生するトレンドにも是非注目をしてみてください。これはテーマによる銘柄物色の醍醐味の一つでもあるのですから。


コラム執筆: 長谷部 翔太郎

証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investor 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数。 過去に「業種別アプローチで極める、銘柄選び」を執筆。

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