第62回 相場を動かす「FOMC議事録」とは...?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第62回 相場を動かす「FOMC議事録」とは...?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル円相場が103円台にまで上昇したことで、100円を割り込むような下落が遠のいた印象ですが、そろそろ大きな調整のリスクに備えたいと考えています。ダウや日経、DAXなど先進国株価がすこぶる堅調であることが急落の警戒を緩めてしまう一因となっていますが、バブルが形成されても困る人がほとんどいない株とは違って(空売りしている投機家は別ですが)、為替は一方的なバブルにはなりにくい構造です。行き過ぎた円高、あるいは円安局面で市場参加者の利害が一致することがないからです。輸出業者は円安効果で大きな利益を手にできますが、輸入業者にとってみれば円安は輸入コスト増につながってしまいます。

先週末19日、甘利再生相がテレビ番組で「これから円安がどんどん進むと国民生活にマイナスの影響が出てくる。それをどう最小限にとどめるかがわれわれの仕事だ」と話したというのも、そうした懸念を指摘した発言でした。この発言をきっかけに週明けのドル円相場は大きく下落して始まりましたが、すぐさま旺盛な買いが入り、崩落には繋がらず。市場関係者は「あの程度の発言ではドル買いトレンドを覆すことはできない」との見方を示しているようです。この指摘は正しいと思いますが、この発言がきっかけとなって市場のムードが変わるようなら、これは後に「あの時からだったな」という急落のトリガーにも成り得る非常に重要な発言であり、重要なタイミングであったと思います。
甘利さんのせいで調整が入るわけではないにしても、結果的に調整入りとなる大きなきっかけを与えてしまう可能性は大いにあり得るということです。

ではこの後、甘利発言に続いて何がドル円相場のさらなる調整に油を注ぐこととなるでしょうか。

今週はFOMC議事録が公表されます。今週はこれが大きな注目点となるとみています。
FOMC(連邦公開市場委員会)は年に8回開催され政策金利の決定や、為替レートの誘導目標などの方針が決定されますが、リーマンショック以降FRBはFOMCでQE1,2,3と量的質的緩和策を発表し米国経済を支えてきました。要するにドルのバラマキをやって景気を刺激しようとしてきたのです。これにより米国のマネタリーベースはリーマン以降の約4年でQE1、QE2、QE3の3段階で3兆ドル近くまで3倍以上に急増しています。このお金が今、米国株を押し上げているとみていいでしょう。しかし、雇用や住宅などの分野で米国経済が回復基調にあることや、このままバラマキを続けることへのリスクなどから緩和をやめる時期の議論が高まってきています。これを「出口論議(出口戦略)」と言いますが、FOMCでFRBメンバーがどんな出口論議を交わしていたのかが明らかになる「FOMC議事録」は、マーケットを大きく動かす材料として注目されているのです。緩和を縮小、あるいは止めるということはすなわちバラマキが縮小、ストップするということですから、ドル高要因となりますが、株式市場にとってはFRBからのバラマキが減るということで下落要因として意識されるとも指摘されています。

今週は4月29日から5月1日に開催されたFOMC議事録が公表されるのですが、(FOMC開催の3週間後に議事録が公表)公表時間は日本時間の午前3時!寝ていますよね...。日本勢が休んでいる間に大きな動きとなることが多いことから、注意が必要です。今週22日水曜の夜、日本時間では23日木曜の午前3時には米ドル、米株が大きく動く可能性があることに留意しておいてください。
これで米株や米ドルが崩れるという予想に立ったものではありませんが、マーケットのムードとしては強気一辺倒となりSell in Mayはないと楽観が渦巻いていることから、思わぬ下落となる可能性が高まっていることと合わせて、注目されているFOMC議事録などのイベントがなにかきっかけとなるやもしれないと思っているということです。議事録だけではなく、今週米国の要人による出口発言には用心しておいてくださいね。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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