第16回 大気汚染防止のため石炭燃焼を削減も効果は?【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第16回 大気汚染防止のため石炭燃焼を削減も効果は?【北京駐在員事務所から】

冬の間、日本でも何度となく報道されました北京の大気汚染は、春から夏となり、「一面真っ白」までの酷い状況は見られなくなりました。
それでも、日本の環境基準あるいは注意喚起のための指針の値は、ほぼ常時超えている状況です。

深刻化する大気汚染への対策として、北京市では汚染物質の主要な発生源の一つである暖房用の石炭燃焼を年々減少させてきました。
それにもかかわらず、この冬の汚染状況は過去最悪となり、北京市の環境保護局は追加の対策として、2015年末までに、

(1) 四環路(主要道路の一つである環状四号線 東京の環七通りくらいに相当します。)の内側にある石炭ボイラ

(2) 毎時20トン以上の蒸気を発生させるボイラ

を全て天然ガス等のクリーンエネルギーに代替すると発表しました。

石炭ボイラを使用していた工場などでも、天然ガスへの切り替えが進んでおり、市中心部の東城区と西城区、ならびに西部郊外の石景山区の3区では、既に石炭ボイラが全廃となっています。

これらの対策がどの程度功を奏すのか、まずは次の冬場が注目されるところですが、大気汚染物質の発生源には、石炭燃焼のほかにも、自動車の排気ガスや、工場及び建設現場から排出される埃等があり、これらについては未だ有効な対策が示されていません。

加えて、北京市の大気汚染の原因物質のうち3分の1程度は、周辺地域から飛来しているとの推定もあり、北京市が講じる対策のみでは、根本的な解決には程遠いと言われています。
自動車の排気ガス規制を見ても、周辺の各省の基準は北京市のものよりも緩く、経済発展の度合の差が、環境汚染対策にも反映する形となっています。

本年初めの深刻な大気汚染は、北京市のみならず、中部から南部にかけても発生し、新聞やテレビも大々的に報じていたのですが、現在はニュース等での扱いも激減し、まさに「喉元過ぎれば・・・」という感じです。
政府だけでなく、一般市民もこの問題に危機感を持たないと、将来悲惨な結果がもたらされるのではないかと心配になります。

北京市単独にとどまらず、中央政府が主導し全国規模で有効な対策が講じられるよう願いたく思います。

=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧