第4回 バイオ株を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第4回 バイオ株を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場は先々週の日経平均急落以降、かなり荒っぽい展開となっています。それまでの過熱感の反動が噴出してきた印象ですが、相場が息の長いものとなるためにはこういった調整は不可欠だったとも考えます。同時に、株式に投資するスタンスとして、全員が強気の時こそ売りを、全員が弱気の時こそ買いを、冷静に考えなければいけないという鉄則を再確認することにもなりました。「もうはまだなり、まだはもうなり」ですね。

さて、4月より「テーマを読み解く」と衣替えした本コラムですが、4回目となる今回は、「バイオ」を取り上げてみたいと思います。このテーマは4~5月にも書こうと思っていたのですが、株価の上昇があまりにも速く、書くタイミングを掴めずにおりました。現在はようやく株価も落ち着いてきたことから、このテーマを振り返ってみるよい機会ではないか、と考えました。

そもそも株式市場において先端バイオテクノロジーというテーマは最も難しいものの一つと言って過言ではないと思います。これらの将来性に関しては議論の余地がありません。一般に、生物そのもの、あるいは遺伝子など生物の構成成分を応用する技術が「バイオ」と括られますが、それらは自然界に存在しない生物要素の創製を可能にし、人間の生命や生活、医療分野において革命的な進展をもたらす可能性を秘めているためです。研究が成功すれば、世界の常識を覆し、一気に世界市場を席巻することも夢ではありません。まさに一攫千金の世界です。投資家であれば、そういった会社にこそ投資をしてみたいと考えるのは当然でしょう。しかし、そんな「うまい話」がそうそう転がっているはずもありません。もちろん、バイオ会社は自社の技術に自信を持って研究に注力しているものの、本格的な商業展開にまで漕ぎ着けた例はむしろ極めて少ないのが現実です。バイオ株への投資は、この厳しい現実を十分に認識しておく必要があります。バイオというテーマが難しいのは、成功シナリオと厳しい現実とのギャップがあまりに大きく、かつ研究の進捗が外部から解り難いため、投資のタイミングが計れないことに拠るのです。

今回、バイオ株が急上昇となったきっかけは、京都大学山中教授のノーベル賞受賞でした。これを機に政府もバイオ関連予算の積み増しなどを検討し始めたため、研究の進展、成功の確率が増すという見方に繋がりました。これは、前述の「厳しい現実」というリスクが低下するということでもあります。株価が大きく上昇してからは、「上がるから買う」展開にシフトした感は否めませんが、そもそものきっかけは極めて合理的であったということができるでしょう。この時点では、過去にないほど分かり易いバイオ株への投資タイミングであったと言えます。しかし、この分かり易さこそがその後の相場の過熱を産むことに繋がったのも確かです。一攫千金シナリオが台頭し、「上がるから買う、買うから上がる」状況になってくると、もはや撤収のタイミングは誰もわからなくなってしまうからです。

ここでの教訓は2つあります。一つは前段で触れた「まだはもうなり」の視点をとにかく冷徹に持ち続ける必要があること。もう一つは、例え過熱が去って株価が調整しても、早いタイミングで投資をしていれば大きな損は免れること、です。政府によるバイオ予算拡大のニュースが出た時点で参入していたとすれば、現在でも十分に利が乗った投資になっているはずです。「一般にはよくわからない」ような難しいテーマであればあるほど、素人にもわかるような合理的な材料が出てきたタイミングは、投資を考えるうえで非常に重要なのです。

コラム執筆: 長谷部 翔太郎

証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investor 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数。 過去に「業種別アプローチで極める、銘柄選び」を執筆。

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