第66回 ドル円相場三役逆転で下落トレンド入り確定?!FOMCがポイント 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第66回 ドル円相場三役逆転で下落トレンド入り確定?!FOMCがポイント 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル円相場も日経平均株価も先週の下落で一目均衡表の雲の下限をろうそく足の実体を持って確りと割り込んでしまいました。これで①転換線が基準線を下抜ける(上から下へクロスする)売りサイン。②遅行スパンがろうそく足を下抜ける(上から下へ突き抜ける)売りサイン。③ろうそく足が雲を下抜ける(価格が抵抗帯下限を突き抜ける)売りサインの3つが揃う「三役逆転」となり、下落トレンド入りが確定しました。雲の下限でろうそく足が支えられて反騰する期待もあったのですが、「三役逆転」が出たということは、上昇トレンドにおける調整の域を超えてしまったということ。しばらくは上昇トレンドに回帰するのが大変難しいということになります。

先週は日銀の金融政策決定会合で「日本版LTRO」と呼ばれる固定金利オペ期間延長導入を見送りました。日銀が市場の期待に応えず「ゼロ回答」だったことへの失望が日本株売り、円の買戻しを大きくさせてしまったのです。

固定金利オペとは日銀が民間金融機関に、政策金利と同じ0.1%の「固定金利」で、最長1年間の資金供給を行うものですが、その期間を3年程度に延長することが期待されていました。そうすることで残存年数が3年までの国債利回りが0.1%近くまで低下しますので、それを受けて長期金利の低下も見込まれるという思惑が一部にあったのです。5・23ショックの引き金となったのが日本国債10年物(長期金利)が1%の大台に乗せたことだという指摘もあり、長期金利が意図せず上昇してしまうことは、金利を抑えてデフレを脱却しようとする日銀の政策の失敗を意味しています。

また、日本株やドル円相場の下落だけではなく、ブラジルやトルコ、インドなどの新興国通貨が大きく下落しています。これまでの過剰流動性相場でじゃぶじゃぶに溢れたマネーは新興国市場に流れ込んでいのですが、米国の出口論議がこうした資金の逆流に繋がっていると見られます。何かが起こった時には、流動性が低くボラティリティが高い新興国マーケットから崩れます。崩れる前に手仕舞って安全資産とされる円に避難して置こう...。リスク回避の円買いが入っているとの指摘もあります。

景気回復が謳われている米国発でリスク回避の円買いとは。「米国が緩和縮小に踏み切るかもしれない」ことがリスクなのです。これまで米国の出口論議は米ドルの引き締め連想からドル買いに繋がるとして、今年は出口論議が持ち上がれば「ドル高円安」が進行すると考えられてきました。しかし、新興国に投資された資金が引き揚げられ新興国株や通貨が下落することから「リスク回避の円買い」が強まるというシナリオが浮上してきたのです。

アベノミクスは成長戦略第3弾が失望され、日銀の異次元緩和は長期金利抑制に動かずで市場の失望を招いてしまいました。日経平均のボラティリティは一向に低下していない状況でまだまだ落ち着きが取り戻せずにいる所に、米国の出口戦略を巡ってのリスクオフ相場が発動しようとしています。まずは週明けのG8、そして18~19日のFOMCがここからのマーケットを占う上で大変重要なイベントとなるでしょう。出口への工程が示されることとなれば、リスクオフの動きが加速、日本株やドル円相場の下落に拍車がかかることとなります。果たして日本株、ドル円相場の今後は「三役逆転」が示す下落のサイン通りとなってしまうのでしょうか。

ここからは個人的な展望ですが、7月に参院選を控えて日経平均が12,000円を下回ってしまうような株価の下落やドル円相場が80円台にまで下落してしまうような流れになってしまうことを政府当局が放置するとは思えないのです。GPIFによる運用計画が先週末に発表されましたが、郵貯・簡保などの運用方針の見直しが飛び出すかもしれません。投資減税と含む法人減税のカードも残されています。日銀には先週見送った固定金利オペの期間延長や付利の撤廃など、まだまだやれることはあります。FOMC経過でリスク回避の動きが加速するようなことがあれば、緊急でこうしたカードが切られることでの急騰も想定しなければならないと思っています。また、FOMCにおいても出口論議が後退していることが確認されるのではないかという見方もあります。米国にとってもリスク回避の流れが米株下落にまで波及することは容認できるものではありません。

日本株、ドル円ロング派にとって現在の環境は決していいとは言えませんが、これまでアベノミクス相場はテクニカル派の「そろそろ押し目を形成する」という見通しを凌駕し続けて上昇するとんでもない相場でした。テクニカルの好転、暗転だけを目安にトレードするのは危険な大型相場です。FOMCで、あるいは緊急で本邦当局からどんな発表があって地合いが一変しても困らないようなポジショニングでデイトレなどのトレーディングに徹する時期かと考えています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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