第6回 教育費を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第6回 教育費を読み解く【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場はようやく落ち着いてきたように見えます。まだ予断は許さない状況にはありますが、これからは一か月後に控えた参院選を少しずつ織り込み始めることになるでしょう。当面の焦点はアベノミクス路線の継続・加速が参院選後にどれだけ実現するか、ということになります。5月以降の株価の調整、迫力不足だった第3の矢などがどこまで挽回できるようになるのか、がポイントでしょう。8月には、来年4月からの消費税増税が本当に実施されるのかどうかも決まります。引き続き「政策」が相場の柱になる状況は続くように思えます。

さて、「テーマを読み解く」とした本コラムですが、6回目となる今回は、「教育費」を取り上げてみたいと思います。これがテーマとなったのは、年初に祖父母から孫への教育資金を(贈与税対象から)非課税化するとの発表が発端です。実際、本年4月よりこの制度は時限立法化され、既に適用されています。この狙いは、比較的資金に余裕のある引退世代から、資金需要の大きい現役世代へ、お金を円滑に回すということ。これは現役世代にとって非常に大きな支えになります。ローンなどを抱える世帯が多い中、子供向けにお金のかかる教育費の負担を分担することができるためです。引退世代においても、相続税が2015年から実質引き上げとなる中では、「どうぜ最後は税金を払うことになるなら無税で孫へ」という気持ちにもなります。こういった流れはマクロ的にも効果があります。当然ですが、お金は経済の血液でもあるため、これが回り始めると経済にも好影響が期待できるからです。以前から、テーマは「それによってモノの流れがどう変わるのか」と「誰がそれを喜ぶのか」が重要だと指摘してきました。この場合は、「お金の流れが変わり」、「現役世代がそのメリットを享受する」という形になります。閉塞感が蔓延する中、現役世代がメリットを受けられるようにお金を回そうという政府のアイデアはなかなかなものだと思います。

非課税対象となる教育資金には、学費のみならず、(上限はあるが)学習塾などの費用も含まれます。これを受けて、株式市場では教育関連銘柄(塾やスポーツ教室など)が大きく注目を集めました。引退世代の資金を活用することで、従来であれば例えば塾通いを考えていなかった家庭へもビジネスチャンスが出てくるとの観測が広がったためです。少子化で市場が縮小基調にあった教育関連産業にとって、これは明らかに追い風です。ひとまずはその追い風を市場は素直に好感する展開になったように思います。

しかし、現在はもう少し冷静に考える必要があるでしょう。第一に、この追い風の中、似たようなサービスを行っていると、教育産業内で顧客取り込みに向けて過当競争が発生する可能性があります。市場拡大を目論んで投資をしたところほど、顧客を十分量確保できなければ、業績は非常に厳しいものを強いられてしまいます。第二に、市場は決して安定的に拡大はしないということです。非課税メリットを活用する引退世代の数は、おそらく初年度が最も多く、その後漸減していく可能性があります。つまり、市場の拡大ペースは今が最も高い、ということになりかねないのです。追い風ではありますが、その風が徐々に弱くなってくるのではあれば、株式市場の見方も変わってくるかもしれません。当然、少子化自体が止まったわけでもありません。そう考えると、このテーマが息の長いものになるには、教育産業自身が創意工夫によってより有効な教育資金の使い道を引退世代、現役世代に提案していく必要があると言えます。こういった動きは近い将来必ず出てくると予想します。教育をテーマとした相場は、その時に第二幕を迎えるのではないかと考えています。

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