第21回 子供の教育にはまず住宅選びから 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第21回 子供の教育にはまず住宅選びから 【北京駐在員事務所から】

先週、海外に留学する中高生が増加しているとご報告申し上げましたが、もちろん中国全体では、そのようなケースは圧倒的に少数で、ほとんどの子供は国内で小、中、高、そして大学へと進学します(中国の教育制度は、日本と同様6・3・3・4制です。)。

学歴信仰も根強く、多くの親たちが、子供の将来の成功のためには、有名大学を卒業することが必要条件と考えています。
そして、有名大学への道を切り拓くためには、進学実績に優れる高校、中学、さらには小学校への入学がまず第一と考え、大変な努力をしています。

中国では、小学校、中学校は、日本の公立校と同様、居住地により学区が定められており、指定された学校に通学することになります。
また、高校については、日本のような入学試験もあるものの、地域、学校により推薦や中学の成績等を組み合わせた、様々な方法により、入学者の選抜が行われます。

有名大学への進学実績は高校ごとに大きく異なっており、実績ある高校への入学者も、特定の中学、さらには小学校に偏っているそうです。
そのため、「子供を良い小学校に入れよう。」と考える親たちが、特定の小学校の学区内の住宅の購入に走り、物件価格が急騰しています。

北京で最も人気があるのは、清華大学(習近平国家主席、胡錦濤前国家主席の出身校です。)に近い「五道口」というエリアです。
最近の取引事例では、37㎡の1LDKが350万元(約5,600万円)となっています。物価や賃金の差を考えると、東京都心の物件を上回る水準です。
人気校の学区を少し外れると、2割くらい価格が下がるそうです。

また、上海でも、最も人気のある学区内の物件は、道一本隔てた隣の学区との価格差が2倍にもなるそうです。

人気のある学校の学区内に住居を確保し、戸籍を移して入学資格を得る(通常入学までに3~5年間程度の居住実績が必要です。)ために、物件の買い替えに奔走する人や、中には子供ができる前から、住宅の購入に動く人もいるそうです。
ところが、無事物件を取得し、一安心となった後に、学区の変更が生じ、もくろんでいた学校への入学が叶わなくなるケースもあるそうで、まさに悲喜こもごもです。

海外留学を含め、子女の教育にも「お金がすべて」のように思えます。
このことが、例えば食品の偽装事件のような、「とにかく手段を選ばず儲けよう。バレたらその時考えよう。」的な拝金主義の蔓延に繋がっているように思えます。

「可愛いわが子のために」と奔走する親たちの努力を否定するものではありませんが、何とも「健全でない」嫌なものを感じざるを得ません。
何が変化のきっかけに、あるいは原動力になるのか、見当がつきませんが、「このままで良いはずはないだろう。」という思いが募るニュースです。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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