第69回 フォワード・ガイダンスって?!今年の最強通貨はドル?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第69回 フォワード・ガイダンスって?!今年の最強通貨はドル?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週末5日に発表されたアメリカの6月の雇用統計の数字を受けて、ドル/円相場は101円台まで上昇しました。NFP・非農業部門雇用者数が予想を大きく上回り、また過去2か月分の数字も上方修正されたことから過去6か月平均が20万人を超え、マーケットにはいよいよ9月にアメリカはQE3緩和縮小に踏み切るのではという思惑が広がったことからドル買いが加速しました。先月6月のFOMCでバーナンキ議長が「年内に月次の資産買い入れペースを緩めることが適切と考えている。その後の指標が現在のわれわれの経済見通しに引き続きほぼ沿った内容となれば、来年上期を通じて買い入れを慎重なペースで縮小していき、年央頃に停止するだろう」と発言したことで、FRBが現在月間850億ドルのペースで購入している資産の買い入れ額を縮小する時期がいよいよ近づいているとの思惑が高まりドル買いの流れが生まれていましたが、雇用統計の数字を見てさらにその時期が早まるだろうという期待が高まったのです。

加えて、先週はBOE(英国中央銀行)とECB(欧州中央銀行)が同時にフォワード・ガイダンスを導入したことで、ポンドとユーロが大きく下落しており、この側面からもドル高に拍車がかかっています。先週は、ポンド・ユーロ・ドルの今後の大きな流れを占う非常に重要な発表があったと言えるでしょう。では、その重要なフォワード・ガイダンスとは一体なんなのでしょう。

フォワード・ガイダンスとは現状の金融緩和政策の時間軸効果を狙った手段です。今回BOEとECBは、低金利政策はずっと続けるよ!という「低金利政策の長期化」メッセージを発信しました。金利を引き下げるという伝統的な政策は、これ以上引き下げられないというゼロ金利政策に入ってしまうと、追加の緩和手段を失ってしまいます。中央銀行が、金融調節を行うために市中から買い入れる資産の範囲や規模を従来以上に拡充させるという非伝統的手段もあるにはあるのですが、伝統的手段において策がなくなった場合、時間的効果を狙ったフォワード・ガイダンス導入というのは一定の効果があることは米国の例を見ても明白です。米国はインフレ見通しが2.5%を超えず、失業率が6.5%に低下するまで事実上のゼロ金利政策を継続としていますが、2012年のFOMCで「2014年後半まで低金利政策を維持する」と明記しています。これによって米国の長期金利は抑制され景気回復に大きく貢献したとみられています。

先週のBOEでは、英経済の低迷はしばらく続くとした上で、将来的な政策金利引き上げ織り込みは景気の弱さを踏まえれば適切ではないとの声明が出されました。さらに、このところの市場金利の大幅上昇は景気回復見通しの重しになるとし、将来的な政策金利の引き上げ織り込みは「国内経済の最近の動向を踏まえれば、適切ではない」と強調しています。今回のBOEからカナダから来たカーニー新総裁に変わっていることから市場の注目は高かったのですが、フォワード・ガイダンスの導入と受け取れる声明に、マーケットのサプライズは大きかったとみえ、ポンドは大きく下落しました。

またECBの声明には「政策金利は長期に渡り現在の水準か、それよりも低い水準に留まる」との記述が挿入され予見可能な将来の政策金利のバイアスが下方であることが示されました。 長期にわたり低金利を継続すると明言したことで、ユーロも大きく売られましたね。

あの6月の雇用統計の数字を受けてもなぜアメリカの株価が下がらなかったのかのカギはここにあるように思います。

これまで米国の雇用の指標が良ければ、早期出口開始の思惑からドルが買われることは理解できますが、緩和縮小の思惑から株価にはマイナスなのではないか、と思われてきました。QE1、QE2 終了時は株価に大きな調整がありましたね。ところが先週金曜は米国株式市場は堅調に引けました。米国が緩和を縮小しても、これから異次元緩和を推し進める日本、フォワード・ガイダンスを導入し、長期低金利政策を明言した英国と欧州の緩和マネーが米株を支えていくのかもしれません。

そして、ポンド、ユーロ、円が緩和策によって価値が希薄化する反面で米国は縮小からドル高の思惑が働くことから今後の最強通貨は米国ドルであることが示されたとみていいでしょう。「中銀に逆らうな」です。しかし、これも米国が本当に年内に資産買入れ額の縮小に踏み切ることができれば、の話。何が起こるのかわからないのがマーケット。もし、その時期が遅くなればなるほど、このシナリオにも修正が必要となってきますが、その時はまたその時。勝てるトレーダーは先のことなど考えていません。今、勝てる波に乗ることだけに集中しているものです。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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