第70回 FRB議長による半期議会証言の重要性とは?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第70回 FRB議長による半期議会証言の重要性とは?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週は17-18日にバーナンキ議長の半期・金融政策報告(議会証言)があります。今週のマーケットの最大の注目はこの議会証言でしょう。今週ということだけではなくて、この議会証言はヘッジファンドなどのファンドマネージャー達が今後半年のトレード戦略を構築する上で最も重要視しているイベントだということをご存じでしょうか。

FRB議長による半期金融政策報告・議会証言は半期ですから半年に1度、つまり年に2回2月と7月にありますが、毎回マーケットの方向を示唆する重要なポイントとなっています。前回2月27日の半期議会証言では「雇用が大幅に改善しない限り、量的緩和を継続するとのスタンスを再度示し、バーナンキ議長は出口戦略について明言は避けました。市場予想とほぼ一致したこともあり、また市場は緩和政策が続くことへの安堵から相場は一時的な反応に留まりリスクオン継続となりましたが、過去のバーナンキ議長の半期議会証言ではマーケットが大きく転換したこともあります。

2012年2 月の議会証言では、バーナンキ議長は原油高について懸念を示しインフレ抑制ともとれる発言を行いました。緩和政策への言及はなかったのですが、マーケット関係者はインフレ抑制とも受け止められる発言は裏を返せばFRBがドル安に対して懸念を表明したものではないか、と解釈。これを機にドル安がストップし、一転ドル高となりました。
議会証言があったのは2月29日でしたが、ユーロ/ドル相場のチャートは見事にここが天井となり、ユーロ高ドル安からユーロ安ドル高へと転換しました。原油はあらゆる素材のもとになっており、また車社会の米国にとってガソリン高にも繋がります。素材高やガソリン高は米国経済にとってマイナス要因となりますが、それについて「中央銀行のトップ」が言及したことは即ち、通貨安への苦言であると解釈されたということです。そしてまた今も原油が高くなっています。今回の原油高はドル安が主因ではなく、エジプトやシリアなどの地政学要因を材料にした投機筋の参入によるものとの見方が大勢ですが、過去には原油高に懸念を表明したことからドル安がストップした経緯があるだけに、気になるところではあります。

そして今回の議会証言は、特にバーナンキ議長のこれまでの発言の真意を見極める上で非常に注目が高いといえます。バーナンキFRB議長は、5月と6月にはややタカ派的な発言をしていましたが、7月にはハト派的な発言となったことで米ドルが行ったり来たりの乱高下となっています。市場に大きな影響を与えた5月以降の発言を振り返ってみましょう。
 
5月22日「雇用市場の改善が継続すれば、今後数回の会合で資産購入のペースを縮小することが可能である」
⇒ヘリコプター・ベン(デフレを克服するためには、「中央銀行が紙幣を増刷しヘリコプターでばらまけばいい」と発言したことがあることからヘリコプター・ベンというあだ名がある)とも呼ばれる超ハト派のバーナンキ氏が出口戦略へ言及したことで、ドル高進行へ。

6月19日「われわれは今後数回のFOMC 会合で、長期債買入れプログラムの減額(tapering)を行う可能性があり、来年半ばには購入を完了させたい」
⇒明確に出口への工程を示し、ドル高が加速。市場には早ければ今年9月にも資産買入れ額を縮小させるのではないか、という思惑が広がる。

7月10日「インフレ率は依然低水準であり、失業率は雇用情勢を誇張している可能性があるため、米国経済は極めて緩和的な金融政策を必要としている」
⇒5月、6月と出口戦略に言及していたことや、7月5日に発表された米6月雇用統計の数字が非常に良かったために早ければ7月にも資産買入れ額縮小があるのでは?というところまで市場が前のめりになっていただけに、緩和継続というそもそものハト派バーナンキ氏に戻ってしまったことがマーケットには衝撃に。一転してドル売りとなる。

そして7月17~18日 半期議会証言でバーナンキ氏は一体何を語るのか?!
もし、バーナンキ議長がタカ派的なスタンスに軸足を移した場合、米国10年債利回りの上昇、ドル/円相場の上昇、米国株式の軟調も日本株は堅調となることが予想されます。米国が出口に向かっても日本は今年異次元緩和をスタートさせたばかりということで、米株安でも日本株は騰がる展開がとなっていくものと思われます。
反対にバーナンキ議長がハト派的見解を示した場合、ドル/円相場は下落し、これに連れて日本株も軟調となる可能性もありますが、米株が堅調にとなることも予想されるため、日本株も底堅く推移するかもしれません。どちらにしろ、相場の地合いを一変させるインパクトを持つFRB議長の半期議会証言。ここからの戦略はその発言内容を見極めてからのトレードでも遅くはないと思います。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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