第23回 子女の海外留学が資産運用の手段に? 【北京駐在員事務所から】

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第23回 子女の海外留学が資産運用の手段に? 【北京駐在員事務所から】

経済成長が続く中国では、富裕層を中心に子女の海外留学がブームになっています。
留学生の中心は大学生、大学院生です。以前は理工科系が中心でしたが、現在は人文、社会科学系を含め、様々な専攻分野で、日本を含む各国の大学に中国人留学生が在籍しています。

中国では、北京大学や清華大学等、有名大学の卒業生はもちろんですが、海外留学経験者も、語学能力や国際ビジネスへの適応力に優れると評価され、就職やその後の処遇あるいは昇進に有利と言われています。

OECD(経済協力開発機構)がまとめた2011年の統計では、中国から海外への留学生は約410万人だったそうです。
日本からの海外留学生が年間6万人程度ですから、中国人留学生の存在は圧倒的です。

海外留学を志す学生と父母にとり、多くの選択肢の中から留学先を選定することは難しい作業です。
上海市に本店を置く交通銀行(Bank of Communications)が、中国を含む世界の80都市を対象に、「中国人が学ぶのにふさわしい都市ランキング」を作成し発表しています。
この種のランキングは、大学(教育機関)別に作成されることが多いのですが、交通銀行のランキングは、英国の経済誌「エコノミスト」との協働により、都市別の教育の水準や留学費用に加え、治安、文化の多様性、卒業後の就業機会、さらには子女の滞在用に不動産を購入した場合の投資リターン等、広範な要因を組み合わせて、「子女の留学への投資に対する期待収益の高さ」を評価している点が特徴的です。
交通銀行は、富裕層向けの資産運用(プライベートバンキング)サービスの一環として、このような調査と情報提供を行っています。

第1位はモントリオール(カナダ)になりました。留学費用が比較的安く、またカナダの寛容な移民政策(徐々に厳しくなっていますが)が高評価の要因です。卒業後の就業機会も比較的多く、不動産投資の対象先としても有望と見られています。
カナダには中国からの移民も多くおり、親族や知人のサポートが得られる学生には最適と評価されています。

第2位のロンドンは教育の質と文化の多様性で、また第3位の香港は治安や費用対効果の高さでそれぞれ高い評価を得ています。

米国の主要都市は、ボストンの第7位を筆頭に上位にランクされていますが、費用の高さと卒業後の就業の難しさがネックとなっています。

一方、12位のシンガポール等、アジアの都市が、費用の安さや就職後の給与アップの可能性等、費用対効果が高いことを武器に、評価を上げています。
シンガポールは治安、低い税率、国際金融センターとしての存在感などが高い評価につながっています。
ちなみに北京は27位、上海は49位です。

日本の都市は、東京が25位、京都が57位、大阪が65位となっています。教育の質は高いものの、費用が高く、また卒業後の就職が難しいことが評価を下げています。

日本では、1980年代後半から90年代にかけ、円高の恩恵もあり、留学ブームが起きました。
その後は、長引く不況と卒業後の就職への懸念から、2004年をピークに留学生は減少傾向にあります。

増加する中国人留学生が、世界で強固な人的ネットワークを構築し、教育研究分野あるいは産業分野での競争力を高めていくことが予想されます。
もちろん、海外留学が「万能」という訳ではありませんが、中国の躍進ぶりを示す一つの事象として注目したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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